自然を感じさせるノスタルジックなエレクトロニカ
このアーティストの名前を目にしてまず思うのが、「なぜCanadaなの?」ということだと思います。
Boards of Canadaというデュオの二人はカナダ出身ではなく、イギリスのミュージシャンです。
彼らの音楽は、ブレイクビーツを基調として、シンセとサンプリングが重なり合う幽玄のエレクトロニカ。
そしてこの二人は兄弟であり、サンプリングに使っているのは、彼らが子供の頃、70年代に流行っていたテレビ番組などの音声です。
その中でも特に、National Film Boards of Canadaというカナダの機関が制作した自然に関するドキュメンタリーにインスパイアされているようで、デュオの名前はここから来ています。
子供時代を共有した兄弟で作曲しているというのは強みで、同じ思い出を持つ二人によって、ノスタルジックな過去が再生されています。
彼らは自然派のドキュメンタリーを夢中になって見ていたのでしょうか?
幻想的なシンセサイザーの音が重なり合い、自然の情景がかすみの中に浮かび上がるようなサウンドの世界が作り出されています。
そしてサンプリングの音は歪んでかすれ、アナログな質感に。
どこか古めかしく懐かしい、夢見心地なムードに癒されるようでもあり、瞑想的でもあります。
Boards of Canadaの音楽というものは、時代とともに多少の音質の変化は見せつつも、彼らが目指している地点は変わっていないように思います。
ウケを狙うような派手さがなく、ブレずに独自の美学、芸術性を貫いているアーティストです。