不思議な魅力がカルト的な人気のポストパンクバンド
Joy Divisionというバンドには、どことなく敷居の高さを感じていました。
すごくデザインのセンスは良いのだけれど、無機質で人間味の感じられないジャケットのアートワークからして、決して単純に聴いて楽しめる音楽ではないように見えていたのです。
さらに、ボーカルのイアン・カーティスが自らの手で死を選んだということを知ると、不穏な病んでいるイメージが浮かんでしまい、なおさら聴くことを躊躇してしまいました。
しかし、79年のアルバム『Unknown Pleasures』をはじめてちゃんと耳にしたときに意外な心境が訪れました。
何かほんわかと心に染み入るものがあったのです。
思っていたよりも簡素な演奏が、パンクロックの系譜を継いでいるバンドらしいなという感じ。
従来のパンクのようなハイテンションなアップビートはありませんが、高度な機材やテクニックにNOを突きつけた精神性はそのまま生きています。
そしてそこにイアン・カーティスの思慮深い低い声が加わり、鎮静剤のように精神を落ち着かせるのを感じました。
2枚目にして最後となってしまったアルバム『Closer』では、前作と比べるとテンションが上がっているような印象を受けました。
デビューアルバムで独特の世界観を打ち出したアーティストが、その後のアルバムで多様性を取り入れて勝負に出て行くというのはよくある現象ですが、Joy Divisionも同じ道を辿ったように思います。
大きくなっていくバンドと、妻子との家庭生活の間で板ばさみになり、プレッシャーにさらされていたと言われるイアン・カーティス。
彼が見ていた純度の高い世界は、この世で妥協して生きることから彼を切り離してしまったのかもしれません。