10
星になったラテンミュージックの雄
15歳からプロのピアニストとして厳しい世界に飛び込んだ松岡直也は、2014年にその生涯を終えるまで、数多の名曲を世に送り、また「松岡ゼミ」とも呼ばれた、厳しい彼の指導を受けたバックバンドメンバーからは、和田アキラ、カルロス菅野、大橋勇、高橋ゲタ夫といった、ポップス、ジャズのジャンルの垣根を越えた腕利きのスーパーミュージシャン達を輩出。また、楽曲提供も数多く行われている。
松岡直也氏の功績として、フュージョンと呼ばれるジャズとロックをクロスオーバーさせたジャンルの音楽と、マンボなどに代表されるラテンミュージックを見事に融合させたことである。その美しいリズム、メロディから大手自動車メーカーのCMソングや、ニュース番組のBGMなど幅広く活用され、またジャズフェスなどでは人気を博した。
穿った、そして熱心なファンの方々からお叱りを受けてしまう言葉かもしれないが、ジャズ=小難しい、フュージョン=スーパーのBGMというイメージが先行してしまっているようである。
一見すると、ポップの世界からは離れているように見える松岡直也の音楽は、実はジャジーで、ポップで、なおかつロックなのである。厳しい音楽の世界に身を置き、その生涯を捧げた彼の生きざまは、穏やかな表情とは裏腹に、まさにハードロックやヘヴィメタル、パンクロック以上にロックなのである。
氏の死から6年という歳月が経とうとしているが、トリビュートバンドや後進の腕利きミュージシャンたちにその魂は引き継がれて、若い世代も含めて多くの観客を魅力している。