作家志望の方注目!「小説を書くAI」と、その「師匠」星新一について
今やネットで小説の発表、公開ができますが、書くのは人間…と思ったら、遂に科学文明は「小説を書くAI」を作り上げてしまいました。作家志望の方々は「ライバルが増えた!」と十人十色の反応をしているでしょうが、その背景にいる、一人の作家にも目を向けてください。
『作家ですのよ』
とあるニュース番組で取り上げられていました。その名も「作家ですのよ」。何だかロボットらしくない名前。実はこの名前、ある作家の作品名に端を発していました。
きまぐれ人工知能プロジェクト作家ですのよ
www.fun.ac.jp
きまぐれ人工知能プロジェクト作家ですのよ公式ウェブサイト
『殺し屋ですのよ』という作品です。著者は超短編、ショートショートを1000編以上書き上げたこの分野のレジェンド、星新一さんです。そのタイトルを人工知能の名前にするからにはわけがありました。氏の作品を分析させ、ショートショートを書かせたのです。その作品が紹介されていたのですが、「なるほど確かに星さんぽい」と感心したものです。
星新一、その先見の明
「コンピュータは星新一を超えられるか」 人工知能でショートショート自動生成、プロジェクトが始動 - ITmedia ニュース
www.itmedia.co.jp
星新一さんのショートショートを解析し、質の高いショートショートの自動生成を目指すプロジェクトが始まった。人工知能研究の第一人者ととして知られる松原仁教授など6人がチームを組み、SF作家の瀬名秀明さんが顧問を務める。
このリンク記事でも書かれていることですが、「機械に本当の創作(データを元にしたものではなく、ゼロからの創作)ができるか」という旨、実は星さんのエッセイでも書かれていました。というか、「没アイディア集」の中に。「いろいろな画家の絵をデータ化してコンピュータに絵を描かせる」というアイディアは、星さんがすでに持っていたんです。「データを組み合わせたもので大丈夫かなあ」といった趣旨でやや懐疑的でしたが。
ホシヅル
星さんファンならご存知の、「進化した鶴」ことホシヅルです。口が肥えたためくちばしが大きく、運動不足で足は退化、目と頭が大きいのはテレビの見すぎ。体内は有毒物質だらけで食用にも立たない、役に立たない鶴…というのは後付けの設定で、「単に絵が下手だから」とエッセイで語っておられました。
このホシヅルの「設定」はむしろ退化じゃないかとも思いますが、何にせよ時代を先読みした「星作品」象徴ともいえます。作品の中には、インターネットを思わせるものもありましたし、エッセイにおいて「蚊は憎たらしいけど、かゆいところを掻くのは気持ちい」と、蚊が絶滅した場合の想定について書かれていました。その内容は何とも風刺的で面白いものでした。そのまま小説にできるんじゃないかと思うほどに。
没後20年近く
1997年、星さんは亡くなりましたが、彼がエッセイの中で描いたアイディアは実現しました。形は違えど、いくつかのアイディアもまた。何がどのような形で実現、或いは実現しつつあるかは実際にお確かめを。しかし、いつまでたっても古臭くならない作品を、ごく短くまとめあげるというのはまさに「神」の領域ですね。
参考文献
『できそこない博物館』
『きまぐれ星のメモ』