「日常の謎」ミステリー2作品を読んでみる
ミステリーの中には「日常の謎」といわれるジャンルがあります。探偵や刑事が難事件を解決していくというのではなく、日常の中で気になる「ちょっとした謎」を普通の人たちが解き明かしていくものです。そんな「日常の謎」系ミステリーの中から、アニメ化されて好評だった「古典部シリーズ」と、2016年1月からアニメ放映が予定されている「ハルチカシリーズ」を紹介していきます。
「日常の謎」ミステリーって何?
ミステリーの中には「日常の謎」と呼ばれるものがあります。Wikipediaには以下のように書かれています。
日常生活の中にあるふとした謎、そしてそれが解明される過程を扱った小説作品を指す。多くは本格推理小説に分類される。
謎が解明される過程で、日常生活に潜む人間心理なども同時に明かされる場合が多い。
出典: ja.wikipedia.org
簡単にいえば、腕利きの探偵や刑事以外の人が、物語における日常のちょっとした謎を解き明かしていくというタイプのミステリーです。すでに1980年代にはこうした作品があったようで、今回紹介する「古典部シリーズ」(作・米澤穂信)は2001年初出、「ハルチカシリーズ」(作・初野晴)は2005年初出となっています。登場人物が今風でなく、スマホもSNSも出てこないのは単に初出が古いだけというのが理由です。
似ているようで違う2作品
「古典部シリーズ」と「ハルチカシリーズ」は、ともに「日常の謎」を扱い、廃部寸前の部活を舞台にしているという共通点があります。ただ、「古典部シリーズ」は米澤さんの故郷である岐阜県高山市をモデルにした都市が舞台になっており、飛騨地方の古い習わしを基にした謎を解く話もあるなど、地方色が比較的豊かです。
これに対して「ハルチカシリーズ」は、運動部出身の初野さんが「僕にとっての願望のファンタジーに近い、箱庭的な世界」(「退出ゲーム」解説・293ページより引用)として、吹奏楽部での高校生活を描いた側面があります。そのため、実際には出身地である静岡市清水区を舞台としていながら、あまり地方色が感じられない作品になっています。
どちらが出来がいいか悪いかという話ではなく、あくまでも両者の違いというだけの話ですので、誤解なきよう。
どっちの表紙がいいかな?
ちなみに「ハルチカシリーズ」の方はアニメ放映が近いこともあり、表紙にアニメ版のキャラクターがプリントされたものが販売されています。上のものは本来の表紙の千夏ですが、下はアニメ版の千夏です。
どちらが好みかは人によるでしょうが、個人的には上の方が作品内から想像する千夏のイメージに近いんじゃないかと思っています。