野坂 昭如(のさか あきゆき、1930年(昭和5年)10月10日 - 2015年(平成27年)12月9日[1])は日本の作家、歌手、作詞家、タレント、政治家。
放送作家としての別名は「阿木 由紀夫」(あき ゆきお)、シャンソン歌手としての別名は「クロード 野坂」(クロード のさか)、落語家としての高座名は「立川 天皇」[2](たてかわ てんのう)、漫才師としての野末陳平とのコンビ名は「ワセダ中退・落第」(わせだちゅうたい・らくだい)。
プロフィールを見ても分かる通り、野坂さんは非常に多才で各分野に対し知識が深い方でした。
その中でも、やはり作家としての功績は大きく、世代を超えて大きな影響を与えています。
野坂さんの代表作と言えば、ジブリ作品としてアニメ映画化された「火垂るの墓」ではないでしょうか。
現代の日本とはまるで異なる環境の中で、妹・節子を守りながら懸命に生き延びようとする兄・清太の過酷な現状が描き出され、多くの人が涙を流し、当時の悲惨さを経験していない世代にもポピュラーな作品となりました。
今作は野坂さん自身の経験がベースとなっており、「もう一度ドロップをなめたい」と言いながら死んでいってしまう妹・節子は栄養失調で亡くなった野坂さんの実の妹さんがモデルになっています。
もうひとつの代表作は「エロ事師たち」。
こちらは、芥川賞受賞が大きな話題となったお笑いコンビ・ピースの又吉直樹さんが「影響を受けた作品」として挙げていた作品でもあります。
あらすじは、売春斡旋や卑猥な写真、テープの販売によって生計を建てる「エロ事師」のスブやんを中心に展開されていきます。
ひたすらエロス・グロテスク・そしてばかばかしさを追求した作品であり、今村昌平監督によって映画化もされています。
又吉さんは、野坂さんについて「文章のリズムをはじめて体感させてくれた作家」と称し、大きな影響を受けたこと・また純粋に作家として非常に敬っていることを明かしています。
野坂さんは、その飄々とした佇まいから説得力を呼ぶ、多くの名言を残しています。
「人間がどうして、言葉を所有するに至ったか、これまた皆目知らないが、多分『挨拶』が、その根本にあると考える。お互いの意思の疎通をはかるといったって、まず『こんにちは』がなけりゃ無理であろう」
「コラムは3つの『み』で書く。ねたみ。ひがみ。そねみ」
「生活のすべてがスキャンダルになってしまう。妻のいる男がほかの女と寝ると、スキャンダルということになってしまうけど、なんでもないことでしょ、そんなこと」
野坂さんの生き様が反映されたような言葉、文章たちはこれから次の世代にも残っていくでしょう。