自由なようで、いい意味で胸に来る絹谷幸二作品の魅力
とにかく絵具を塗りたくったかのような画面。温かくめでたい印象の富士山だけでなく、時に胸を詰まらせ涙をあふれさせる、そんな絵を描く絹谷幸二さんの世界をご案内。
絹谷幸二プロフィール
1943年誕生。洋画家。アフレスコ壁画技法(フレスコのこと)を日本で初めて用いた人物であり、東京芸術大学名誉教授でもある。イタリア留学経験あり。
出典: ja.wikipedia.org
「自由奔放」な印象を受けます。無論そんなことはないんですが…現実世界での「決まり事」をカンバスに持ち込まず、自由に表現しているようにも思えます。
文字まで入ってます。でも何だか明るい気分になるし、いいなあ、なんて思ったり。
ある意味でピカソっぽいかもしれません。「考えるな、感じろ」の境地なんでしょうか。無論描く方はいろいろ計算してるんでしょうけども、なんか勢いで描いているような気もするんですよね。ていうか、そんな分析すらどうでもよくなってくるような。
こっちまで涙が出てきます。この絵は最初氏のHPで見かけたのですが、その時の説明文を見て胸が詰まりました。「希望」がテーマらしいです、この絵。
「アンジェラ」というんでしょうか、女性の口から洩れる、ひらがなとアルファベット。数か国の言語が混じった「嘆き」なんでしょうか。テーマは「原爆」関連だったように思います。画面右側のむき出しになった「骨組み」のような部分。原爆ドームを思い起こさせませんか?
一見宗教っぽいけども、「だから何?」という気にもなります。
絹谷幸二賞
若い才能の育成及び、具象絵画の可能性を広げるため設立されたもの。と言っても絹谷さん自身は資金に関する協力のみだとか。絹谷さん自身「君の絵じゃ食べていけない」と言われつつ、受賞して元気づけられた経験から、また2008年に参加した「ボテロ賞」で、「思い切った冒険ができる若い人を応援したい」という気持ちが強まり、設立を決めたそうです。
出典: kinutani.jp
若手の育成にも励む。「俺は巨匠だ!」なんて威張らず、また「あの若造が…!」と邪魔することなく若い才能を応援できる人には憧れます。絹谷さん自身も刺激になってますます活気づくかもしれません。
緑にしみる悲しみ
最初にこの方を知ったのは、新聞で取り上げられていたこの作品でした。立体作品ではなく絵だったのですが、いやかなり衝撃的でした。衝撃的すぎて、作者名を失念するほどに。
作中の男性、実は草をつかんで泣いてるんですが、眼鏡の淵から見える涙や、口から洩れた文字。吐息とも嘆きともとれるただ二文字の言葉が妙に心に残ったのです。「絵なのに文字!」とかでなく。この人の作品が与える衝撃はハンマーのようなもので頭を殴るようなものでもなければ、刃物で切られるようなものでもないんです。静かに、水か何かのごとく染み入ってくる、そんな印象です。あらゆる垣根を取っ払い、そこには感動や衝撃だけが残る。芸術ってそういうものなのかもしれませんね。