ぼくのじしんえにっき(大地震SF童話)のネタバレ解説・考察まとめ

『ぼくのじしんえにっき』とは、八起正道による児童書である。絵はいとうひろし。少年・和幸が綴る日記の形式で物語は進む。家族との穏やかな日常は、突如発生した大地震により壊滅。給水制限下での暴動や、友人の住む区域の鉄条網による隔離など、非常時の混乱と人々の変貌が少年の目で淡々と描かれる。阪神淡路大震災、東日本大震災前の作品ながら、災害の真実を突く記録文学的側面を持つSF童話である。
第36回福島正実記念SF童話賞大賞受賞作。

『ぼくのじしんえにっき』の概要

『ぼくのじしんえにっき』とは、1989年に刊行された起正道による児童書である。イラストはいとうひろし。
大地震によって壊滅した街の様子が、主人公の少年・和幸の視点から「絵日記」という形式で淡々と、しかし克明に描き出される。
阪神・淡路大震災や東日本大震災が発生する以前に書かれた作品でありながら、災害直後の混乱や人々の変貌をノンフィクション以上にリアルに捉えており、震災を経験していない世代へ大切な教訓を伝える一冊となっている。
本作は1989年に第36回福島正実記念SF童話賞大賞を受賞している。2023年6月14日には新装版が刊行された。

本作は、和幸(かずゆき)という少年の日記という形式で描かれている。和幸は、祖母、両親、猫と同居しており、祖母と母の価値観の差から来る日々の些細な諍いや、祖母の「お年寄り」特有の考えなどが日記に描かれ、物語は平和に進んでいく。そんなさ中、突如大地震が訪れる。

『ぼくのじしんえにっき』のあらすじ・ストーリー

日常の崩壊

物語は、祖母や両親、飼い猫と暮らす少年・和幸(かずゆき)の穏やかな日常から始まる。彼の日記は、嫌いな人参を食べさせられることを「ぜいたく」と称するなど、子供らしい独自の感性で綴られていく。しかしある日、突如として発生した大地震がすべてを一変させた。
大地震によって街は壊滅状態に陥り、それまでの平穏な生活は完全に崩壊した。街はメチャンコになり、物資不足は深刻を極め、青空市場のようになったスーパーからは品物が消え失せる。
和幸の日記には、給水車に並ぶ人々が白目をむいて殴り合う姿や、子供に噛みついた犬を撲殺する大人、水をもらえず泣き崩れる妊婦など、非常時における人間の剥き出しの姿が容赦なく記録されていく。

鉄条網の向こう側

和幸にはとし子(としこ)ちゃんという友達がいた。震災の混乱が続く中、とし子ちゃんが住む地区が、何の説明もないまま突如として鉄条網により「隔離」されたのだ。そこには防毒マスクを装着した自衛隊員が配備され、異様な殺伐とした空気が漂い始める。
和幸は隊員の目を盗み、危険を冒して彼女に水や食料を届けようとした。しかし、再会した家人は「もう来てはいけない」と和幸を拒絶したのだった。

見出す「希望」

絶望的な状況に和幸は泣き、大人たちの醜い争いに怯えながらも、彼は日記を書き続ける。上級生と喧嘩の末に笑い合ったり、祖母の言葉「情けは人のためならず」を実感したりといった、子供たちのたくましさやささやかな希望もまた、等身大の言葉で日記に刻まれていく。
嘘偽りのない感情を乗せた最後の一行まで、少年の眼差しは世界の変貌を捉え続ける。

『ぼくのじしんえにっき』の登場人物・キャラクター

主人公と家族

和幸(かずゆき)

本作の主人公。ごく普通の小学生の少年。大地震による街の崩壊を、絵日記という形で記録し続ける。
親や大人が言ったことをそのまま使ったりする半面、「狂犬病」について一考したりもする。
子供らしい瑞々しい感性を持ちつつも、現実を直視する観察眼を併せ持つ。

和幸の祖母

和幸と同居しているおばあちゃん。缶詰を大量に溜め込むなど、お年寄り特有の知恵や備えを持つ。
「情けは人のためならず」といったことわざや宗教観念を和幸に伝える。

和幸の母親

和幸の母親。嫁姑問題ほどではないが、母と祖母の間には価値観の相違による小さないさかいが見られる。
給水車での水を巡っての暴動を、和幸と共に目撃する。

和幸の父親

和幸の父親。地震が発生した日、混乱の中、夜遅くに帰宅した。

和幸の家の飼い猫

和幸の家で共に暮らすペット。崩壊していく日常の中で、家族と共に震災の夜を過ごす。

周囲の人々

とし子(としこ)

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