芥川賞作家、綿矢りさのヒステリックがすごすぎる

2004年の芥川賞受賞から数年。女流小説家の綿矢りささんの執筆ペースは、同時受賞し精力的に新作を発表していた金原ひとみさんと度々比較され、物足りなさを語られることも少なくありませんでした。そんな綿矢りささんの特徴とは……?

綿矢りささんとは?

高校在学中の2001年、「インストール」でデビュー。
女子高生と耳年増な男子小学生がエロチャットで荒稼ぎをするという作品は当時の文藝賞の最年少受賞タイとなりました。

「インストール」は2004年に、片岡K監督により映画化。主演は上戸彩さん、神木隆之介さん。

「蹴りたい背中」での芥川賞受賞後、執筆ペースにかげりが見えた綿矢さんですが筆を止めることはなく、その後も作品をどんどん発表。

芥川賞受賞後の作品には、「ちょっとめんどくさい女子が静かに静かに感情を溜め込み、どこかで爆発させる」という傾向が見られ、新たな作風として語られました。

綿矢さんが描き出す女の子はヒステリックでめんどくさいところがありながら共感を呼び、愛すべきキャラクターとして広い世代に親しまれています。

めんどくさい女子その1 『勝手にふるえてろ』のヨシカ

主人公である女の子「ヨシカ」が、「イチ」と「ニ」という二人の男性のあいだで揺れる……というストーリー。
しかし「ヨシカ」は、恋愛経験のないこじらせ女子。

自らの脳内に住む自分と対話したり、頭の中で「自分の中の男の子」像をむくむくと育ててしまったり……痛々しさとヒステリックな側面を抱えているからこそ、その「だめさ」が共感を呼んでいるのでしょう。

男性主人公があまたの女性を手なづけるという構図に比べ、今作のような「女性主人公が二人の男性を転がす(?)」という作品は、まだまだ全面的に受け入れられにくい風潮にあるように思います。

どうしても「悪女」というイメージを抱かれやすい浮気性分の女性主人公に、あえて「イタイ」「ヒステリー」「めんどくさい」という性質を乗せることで、潔癖な読者さえも誘い込む綿矢さんの話作りは、非常にクレバーと言えるのではないでしょうか。

めんどくさい女子その2『しょうがの味は熱い』の奈世

「煮え切らない男と煮詰まった女の、現代の同棲物語」とも語られる恋愛小説。

早く彼氏と結婚したくてしたくてしかたのない主人公の奈世は、踏み切ってくれない彼氏・絃にぐいぐいアプローチを仕掛けていきます。

しかし結婚のプレッシャーが強くなるたび、絃は「結婚さえすればなにか魔法がかかっていままでの生活がすべて良いほうへ傾くとでも思っているのだろうか」と語られるように冷静に考えてしまい、二人はますますすれ違うばかり。

どんどん余裕がなくなっていく奈世の依存気質と感情的な様子には「めんどくさい!」と感じてしまう人も多いのではないでしょうか。

ラストには「!?」と驚かされた人も多い作品。あなたはどう感じるでしょうか。

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