『美女と野獣』だけじゃない!ボーモン夫人作品集

ディズニーアニメで有名な『美女と野獣』の原作本です。画像の本ではオムニバスで、『美女と野獣』以外にも様々な作品が収録されています。子供に向けた教科書といった性格が強いため教訓めいた話ばかりです。が、「説教臭い」と食わず嫌いせず、機会があればご一読させてください。ジャン・コクトーが見出して、あのディズニーが映像化したほどの傑作なのです。ほかの作品も、ね。

初めに

大概の話に「仙女」といういわゆる魔女的な存在が登場します。以下、簡単に粗筋の紹介をします。

『二人の王子さま』

「20歳までうんと不幸な目に遭う」と仙女に告げられた「ファタール」と、「20歳まで幸福な人生を送る」運命を与えられた「フォルチュネ」。この双子の王子がどんな人生を送るのか?答えは読めばわかります。ちなみにファタールは「不幸な子供」、フォルチュネは「幸福な子供」という意味です。そのまんますぎます。仙女、ネーミングセンスないです。

『怪物になった王子さま』

「私の息子の友達になって下さい」父王の助けたウサギは仙女でした。「お礼がしたい」という仙女に、王は先の言葉を言うのです。そして、仙女は王子の「友達」となり、ある贈り物をするのでした。「やりすぎだろ!」と言いたくなるようなチョイ役貴族の女性が地味に最高です。

『告げ口の好きな少女』

美貌、才能、その他もろもろ、人のうらやむものすべてを与えられた貴族の娘。しかし、仙女たちの女王は、他の仙女が彼女に「もっと価値あるもの」を与えなかったことに怒り、口を利けなくしてしまいます。母親は嘆き悲しみ、娘を猫かわいがりします。そして、なまじ才知を与えられた娘には、虚栄心も備わっていました。そんな彼女は、悪い方向へと成長を遂げていくのです…。「自分の才能を示したい」という気持ち、ものすごくわかります。いろいろな意味で、痛いほど。

『虐げられた王子さま』

ドケチを絵に描いたような王が、さらにケチで金持ちの娘と結婚。生まれた息子は二人。兄には立派な教育係がつけられたものの、弟の方は…仙女の所業が中々に痛快です。

『醜い王子さまと美しいお姫さま』

「悪い仙女」と「いい仙女」が出てきますが、「悪い仙女」の方が少しだけ力が強いという設定。ある王家にとんでもなく醜い王子が生まれますが、「いい仙女」は王子に知性を送ります。そんな彼でも「美しい姫」に恋してしまうあたりは「やっぱりね」という感じですが、「誓ってもいいです。ボクの記憶と聴力がなくならない限り、彼女と結婚しません」という台詞が何か笑えます。ブサメンインテリ王子の明日はどっちだ!?

終わりに

ほぼタイトルでネタバレしているようなものですが、教訓ものなのに大して鼻につかず、何だか爽やかな印象を与えます。口調が芝居がかってはいるものの、そこはご愛嬌。そもそも、教訓とは子供のためだけのものではないのですから。

えどまち
えどまち
@edono78

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