「パロディとはまじめな原作を模した戯作、パスティーシュとは原作のやり方をまじめにまねた摸倣だと、エラリー・クイーンは規定している」と、オーガスト・ダーレス『ソーラー・ポンズの事件簿』(創元推理文庫)の解説(戸川安宣)に書いてありました。引用元は記載されていませんでしたが、パロディとパスティーシュの違いをわかりやすく説明しています。
パロディが「戯作」なら、パスティーシュは「贋作」となります。
出典: note.mu
原題「THE EXPLOITS OF SHERLOCK HOLMES」
ご本家ホームズの作者、サー・アーサー・コナン・ドイルの実子(末息子)アドリアン・コナン・ドイルと推理作家として有名なジョン・ディクスン・カーの共著。
一読しただけだと、「もしかして、これ本当はコナン・ドイルが書いたんじゃないの?」と思うほど、ご本家の作品(※「聖典」と呼ばれています)にそっくり!
父であるサー・アーサー、ホームズという不世出の探偵を生み出した「大先輩」、アドリアンとカーそれぞれの尊敬の念が込められた12話の短編集です。
「聖典」でワトソンが事件名だけを書き、内容については触れずじまいだった「語られざる事件」がずらりと並んでいます。もはやこの作品自体が「古典」の領域。
ホームズファンならば、一読の価値はあります。
原題「THE MISADVENTURES OF SHERLOCK HOLMES」。
上巻は、エラリー・クイーン、アガサ・クリスティー、モーリス・ルブランから文豪として名高いO・ヘンリーに至るまで、著名な作家たちが書いたホームズのパロディ&パスティーシュ集。
それぞれの作家の持ち味が生かされて、軸は同じホームズであっても、攻める角度が皆それぞれであるのがとても面白い。
下巻は、聖典の挿絵画家だったフレデリック・ドー・スティール、「ソーラー・ポンズ」の生みの親オーガスト・ダーレスの他は、「ユーモア作家」と呼ばれる人、あるいはホームズ研究家、果てはアマチュア作家に至るまで、「面白い」作品が集められています。
原題「THE CASE BOOK OF SOLAR PONS」。
作者はオーガスト・ダーレス。「プレイド街のシャーロック・ホームズ」ことソーラー・ポンズとリンドン・パーカー博士の冒険を13編収めた短編集。
ソーラ・ポンズという名前は、「シャーロック・ホームズ」という音の響きを意識して付けられたものでしょう。
推理小説としてのクオリティが保たれており、なおかつキャラがホームズを彷彿とさせるという点で、立派なパスティーシュ作品といえるでしょう。
日本国内で編纂されましたが、内容は国外の作品のみで構成されています。
編者は各務三郎氏。
サー・アーサーの作品では?と騒動になった「指名手配の男」が収録されています。
厳選された内容で、まとまりが良い一冊。
原題「SEVENTEEN STEPS TO 221B」。
編者はJ・E・ホルロイド。日本語訳をした小林司・東山あかね氏(ご夫婦です)は、日本でも生え抜きのシャーロッキアン。
「通好みのする」読み応え十分なボリュームと内容です。
原題「Sherlock Holmes of Baker Street. A Life of the World's First Consulting Detective」
W・S・ベアリング=グールド著。
ホームズの伝記、という体裁で彼が「亡くなるまで」を描いた労作。
ファンにとっては、必携参考書のような存在の作品です。
日本の作家たちによる贋作を集めた珍しいアンソロジー本。
上巻は10編が収められ、山田風太郎の「黄色い下宿人」をはじめとして、赤川次郎、 木々高太郎 、清水義範、 深町真理子 、都筑道夫、 徳川夢声などそうそうたる顔ぶれ。
下巻は8編が収録され、加納一朗、 柴田錬三郎、 阿刀田高、 星新一、 鮎川哲也、小栗虫太郎などこちらも実力派揃いです。
原題「The New Adventure of Sherlock Holmes」
編者はM・H・グリーンバーグ&C・R・ウォー。
サー・アーサーの聖典初作品「緋色の研究」の出版100周年記念として書き下ろされたアンソロジー本です。
ホラー小説の大御所、スティーブン・キングの作品も収められています。
原題「THE SECRET FILES OF SHARLOCK HOLMES」
著者はイギリスの女流作家ジューン・トムスン。
本作を皮切りに、「クロニクル」「ジャーナル」「ドキュメント」「ノートブック」「アーカイヴ」と「シャーロック・ホームズの⚪︎⚪︎」シリーズが書かれましたが、聖典の「語られざる事件」をもとにした、大変本格的なミステリになっています。