流れ星が消えないうちに(小説・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『流れ星が消えないうちに』とは、2006年に発売された橋本紡による小説、およびそれを原作とした2015年の実写映画。かつて事故で失った恋人を引きずってしまう女性と、それを支える現在の恋人、彼らを取り巻く人々が過去の傷と向き合い、再生の道を選んでいくまでを描く。「恋愛小説」というジャンルながら、人生の歩み方そのものを繊細に描き出したかのような美しいストーリーで人気を博した。原作小説は2014年に、新潮文庫の100冊にもラインアップされている。

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『流れ星が消えないうちに』の概要

『流れ星が消えないうちに』(ながれぼしがきえないうちに)とは、2006年に発売された橋本紡による小説および、それを原作とした2015年の実写映画。原作小説は新潮文庫から発売され、2014年には新潮文庫の100冊にもラインアップされているほか、2007年、ベネッセによる「高2進研プロシードテスト模試」に問題文として出題もされている。
最愛の恋人で会った加地を事故で失い、立ち直れずにいる大学生の奈緒子と、それを支える現在の恋人で、加地の親友でもあった巧。そして奈緒子の元に家出をしてきた父や周囲の人々が、過去の傷と向き合い、再生へと歩みを進めていくまでの過程を描く。
「恋愛小説」というジャンルながら、過去の傷に苦しみ、もがく人々の人生の歩み方そのものを繊細な筆致で描き出したかのような、美しいストーリーで人気を博した。
橋本が著した他作品と同様、ヘルマン・ヘッセ著の『車輪の下』や、宮沢賢治著の『銀河鉄道の夜』など、文学小説が随所に登場。さらに、月や星座、流星群といった天体(プラネタリウム)をモチーフとし、野球やサッカー、ボクシングなどのスポーツなども多く登場することから、各所のファンからも高い評価を獲得。
特に天体については細かなモチーフが随所にちりばめられていることから、天体の有識者からは特に評判を呼んだ。

2015年11月には女優の波瑠を主演に据えた実写映画化が公開された。原作者の橋本紡の意見もふんだんに取り入れられ、原作小説の美しさをしっかりと再現したことで話題となった。

『流れ星が消えないうちに』のあらすじ・ストーリー

奈緒子のトラウマと父の家出

本山奈緒子は、父の転勤で両親と妹が引っ越し、東京の自宅に一人残って暮らしていた。亡くなった恋人の加地との思い出が残る自分の部屋で寝ることができなくなった奈緒子は、玄関で眠る生活を送るようになる。加地は、1年半ほど前に小さな島国を海外旅行中に事故で亡くなってしまったのだが、最期は恋人の女性と一緒だったと報道されていた。最愛の恋人の死と、彼が自分ではない女性と一緒にいたことに深く傷つき、何かにつけて思い出してしまう奈緒子。いつも通り玄関で寝起きしていた彼女の元に、ある日、家出をしてきたという父親がやってくる。
加地の友人の大学生、川嶋巧は、高校時代の先輩に誘われて通うようになったボクシングジムを辞めることを決めていた。高校2年の時、親友の加地とプラネタリウムを作ったことを不意に思い出した巧は、現在は自分の彼女となった奈緒子の家を訪ねることにする。
しかし、ドアを開けたのは奈緒子の父。巧から見ると知らない中年男性だった。
奈緒子が夕食を作っている間、父親と巧は、テレビを見ながらビールを飲み、和やかに話していた。料理をしながらそれを見ている奈緒子は、高校2年の文化祭のことを思い出す。
科学部で上映したプラネタリウムのナレーションをしていた加地に心惹かれたことが、2人が付き合うきっかけだったのだ。
その夜、寝つけなかった奈緒子は、巧のことを考える。偶然トイレに起きてきた父と、とりとめもない会話をするうちに、心の中に重いしこりとなって残る何かが、少しだけ楽になったように感じるのであった。

巧と父の対話

翌日目を覚ますと、巧は昨晩の服装のまま寝ていた。「文化祭で奈緒子に告白する」という加地を手助けしたことを思い出した巧は、大学に向かう間、加地や、そして加地を忘れることができずにいる奈緒子のことを考える。
大学からの帰り道、偶然遭遇した奈緒子の父親に誘われて、居酒屋で一緒に飲むことになった巧は、彼が奈緒子の家に家出してきた理由を聞かされるのであった。ずいぶんと参った様子の奈緒子の父に、巧は「動いてこそ、見えてくるものがある」と、かつて加地に言われた言葉をかけるのであった。

やがて季節は春になった。急にアクティブに動き出した父は、町内会の活動などを手伝って暮らしていた。それを良い兆候だと思っていた奈緒子は、巧が父に、加地の言葉を伝えていたことを知る。
奈緒子は、かつて自分も聞いたことがある加地の言葉を、どう処理していいものかわからなくなってしまうのであった。ある日、奈緒子の妹の絵里が、キャンパス見学という名目で突然奈緒子の家に押し掛けてくる。そして父と姉に怒りをぶつけてくる。
その後、奈緒子は高校時代の友人に誘われて同級生の飲み会に行くことになるのだが、その場で根も葉もない加地の噂話を耳にしたことで気分を悪くしてしまい、途中でその席を立ってしまった。
帰り道で、巧と会った奈緒子は初めて加地との思い出を話し、高ぶった感情を吐露して涙を流す。その夜、玄関で眠っている奈緒子のもとにやってきた絵里と恋について語り合っているうちに、言葉が止まらなくなった奈緒子は、再び泣いてしまうのであった。

星に願いを

奈緒子が変わっていこうとしていることに気付いた巧は、そんな彼女を眩しく感じていた。そして、加地と奈緒子が付き合うきっかけとなった文化祭での、2人の初々しい様子を回想していた。
そして巧は加地の良からぬ噂を流していた同級生に殴りかかって逆に袋叩きに遭ったり、姉と一緒に先輩のボクシングのプロテストを観戦に行ったりする中で、自分も奈緒子も加地を忘れることはできないと思うようになっていく。
そして巧は奈緒子の気持ちを尊重し、更に加地のことも忘れることなく「3人で」手を繋いで生きていくと心に決めたのであった。
ある日、巧と夕食の買い物に出ていた奈緒子は、何気ない日常の幸せを嚙みしめていた。
奈緒子は自分の弱さゆえに、いつも加地と巧を比べてしまうことを気に病んできたが、巧の支えもあり、その罪悪感は少しずつ薄れていった。
2人はその日、奈緒子の父や絵里と一緒に夕食をとった。奈緒子はずっと開けることができずにいた自室の押し入れの扉を開けて、加地から預かっていたプラネタリウムを引っ張り出した。それは二人が交際することになった文化祭で、加地が作っていたものだ。

奈緒子はそれを玄関で投影する。そこにやってきた巧は、加地が事故に遭う直前に、事故の時に一緒だった女性に部屋に誘われ、それは断ったもののキスを交わしたと綴られた絵葉書が届いていたことを奈緒子に明かす。しかし、奈緒子の心が折れることは、もうなかった。
玄関いっぱいに映し出された星空を見ながら、2人は、加地のことを忘れる必要はないのだと語り合う。
やがてそこには父や絵里も加わり、彼らはそれぞれ、プラネタリウムの流れ星に願いをかけるのだった。

『流れ星が消えないうちに』の登場人物・キャラクター

主要人物

本山 奈緒子(もとやま なおこ/演:波瑠)

本作の主人公。大学生。4人家族の長女だが、両親の転勤に伴い、実家の一軒家に一人で暮らすことになった。かつての恋人である加地を事故で失ったことや、彼が死の間際に自分ではない女性と一緒にいた、という報道を見たショックから立ち直れずにおり、彼との思い出が多い自室で眠ることができず、玄関で寝起きしている。現在は巧と交際中。

川嶋 巧(かわしま たくみ/演:入江甚儀)

画像左が巧

大学生。加地の親友で、奈緒子の現在の恋人。ボクシングジムに通っていたものの、自分の気持ちと先輩である山崎の意見もあってやめることにした。高校卒業まではサッカー部に所属していた。自分自身も加地の死去以降、彼との思い出を振り返ってばかりではあるものの、常に奈緒子の気持ちを案じている。

加地(かじ)/映画版:加地 径一郎(かじ けいいちろう/演:葉山奨之)

奈緒子と小学生のころからの幼馴染で、高校生になってからは交際していた。巧とは高校時代に意気投合した親友。元々読書や天体などを愛するインドア志向で天体部に所属していたが、巧と出会って等身大の自分を探り始め、大学生になってからは知見を広めるために、とあてのない海外旅行へ旅立つことを繰り返していた。その旅先の小さな島国で、奈緒子ではない女性と共にバスの事故に遭って死亡する。

主要人物の家族

奈緒子の父/映画版:本山 諒(もとやま りょう/演:小市慢太郎)

奈緒子の父。3年前に奈緒子を1人残し、妻と次女と共に佐賀県に転勤していたが、突然家出して奈緒子の元に転がり込んできた。しばらくは鬱々と過ごしていたが、巧と出会って彼の言葉に心動かされ、それからは活動的に様々な場所へ出かけていくようになり、人柄の良さから地域でも愛されるようになっていく。

本山 絵里(もとやま えり/演:黒島結菜)

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