大文豪のリバイバルブーム!
最近、昔の作家の隠れた名作がリバイバルによって人気が出て売れるといったケースが増えています。
その中でも、ある大文豪によるエンタメ小説を紹介します。
今回紹介するのは、
三島由紀夫『命売ります』
遠藤周作『真昼の悪魔』
です。
現在、大型・小型問わず各地の書店でプッシュされています。
お二人とも非常に有名な作家ですが、これらの作品に関しては存在を知らなかったという方もいらっしゃると思います。
ということで作品の特徴をおさえつつ、なぜ今ブームなのかも一緒に探っていきましょう!
古いけど新しい?!文豪による極上のエンタメ小説!
『命売ります』も『真昼の悪魔』も、今から10年以上前に発表された小説です。
(後者にいたっては、なんと最初の発行が昭和59年です…!)
はっきり言って、だいぶ昔に描かれた作品です。しかし現代でも通用する問題提起がされており、設定先行な(いかに奇想天外なキャラクターを作るか、どんでん返しを企むか等)昨今の小説に一石を投じています。
だから現代人が読んでも新しく感じるのです。
命を商売にする男のもとに次々起こる怪事件
<あらすじ>
自殺未遂に終わった羽仁男(はにお)は、自分の命を売ることにし新聞に「命売ります」という広告を出す。
すると次々依頼者が訪れ羽仁男は奇妙な事件に巻き込まれていく…。
不思議な事件がテンポよく起きる可笑しさと、羽仁男の気持ちの移ろいがわかりやすく描かれているのが魅力です。
また中国人の少し不十分な日本語のセリフや、暗号解読のキーアイテムがにんじんであったりとディティールにも非常にこだわっており、コミカルさを失わないように工夫されています。
普段は難解な語句を用いて流麗な日本語を綴る三島由紀夫ですが、本作品では読者の興味を削がないように短い会話をたくさん盛り込み、わかりやすく書いています。
では、現代に通用する問題とはなにか?
それは命に対する価値観です。
現代では凶悪な事件や命を軽視するような事件が多発しています。
その中で私たちは今一度、自分の命は誰のものであり一体何であるかということを考える必要があると思います。
…こう考えてみると、『命売ります』というタイトルは意味を帯びてきますね。
美人女医に潜む悪魔とは?
<あらすじ>
主人公・難波が入院した病院では次々と不可解な出来事が起きる。真実を暴こうと4人の美人女医に疑いをかけ、作戦を実行していく難波だが…。
冒頭で登場する神父が「悪魔」について説いています。悪魔はけっしてみんながイメージするような怪物ではなく、誰の心にもこっそり忍びいる可能性があるものだと。
実はこの説教が物語全体のテーマに関わってくるのです。
道徳的に悪いと思われるような行為をしても罪悪感を持たない女医。彼女の行動や発想に悪魔がひそんでいるのだと納得できます。
この女医の性質が現代の凶悪犯罪者の心理に繋がるような印象を受けます。またそのような法律に触れていなくても、よくメディアで使われる「心の闇」-つまり悪魔を抱えている人間が現代に溢れている、という解釈もできます。
まとめ
リバイバル作品の人気の理由、どうでしたでしょうか。
この記事が少しでもみなさんの読解の手引きになったら幸いです。
また、リバイバルは書店員だけの特権ではありません。誰にだってリバイバルする権利はあるのです。
是非その権限を活用して、隠れた名作を発見してみてはいかがでしょうか。