クラウドコンピューティングの先にあるロボットの時代を描いた「BEATLESS」
2015年といえば、ジェッターマルス誕生の年です。2003年にはアトムが誕生しているはずなのですから、手塚治虫氏の予想ほどには科学は発展しなかったといえます。ただ、近年のクラウドコンピューティングの発達を見ると、ロボットもひとりひとりが独立した人工頭脳を持つのではなく、スーパーコンピューターによる一元管理の方向に発展しているのかもしれません。そういう未来を描いたのが「BEATLESS」なのです。
スパコンによって集中管理される「hIE」
「BEATLESS」(作・長谷敏司、イラスト・redjuice)の世界では、ロボットに当たるhIEは自分の頭脳を持っていません。行動はすべてスーパーコンピューターによって行われており、ひとつの頭脳がいくつもの体を動かしているような状態になっているのです。
そういう世界ですから、hIEは家電のような「道具」として認識されています。そういう世界で施設から脱走したhIE「レイシア」と、そのレイシアに偶然出会った主人公・遠藤アラトを中心にした「モノ」と「ヒト」とのボーイ・ミーツ・ガールが描かれています。
なぜ手塚氏らの考えた未来に進まなかったのか
ロボットというと、かつてアイザック・アシモフ氏や手塚治虫氏が思い描いていたような、ひとりひとりが独立した電子頭脳と意思を持っているタイプが主流です。あの「ドラえもん」もこのタイプに入ります。長谷氏はなぜこの形を取らなかったのでしょうか。
実はBEATLESSの世界でも、かつては独立した電子頭脳を持ったロボットが中心でした。しかし、それではロボットの持ち主同士の利害が対立した場合に人間に危害を加える可能性があり、アシモフのロボット三原則を守ることができなくなってしまうのです。そのため、最初からスパコンで一元管理することでこの問題を解決していると作中では解説されています。
かつては考えられなかった方法ですが、クラウドコンピューティングが現実に存在している現代からみると、かえってこの方が進化の方向としては自然なように思えるのです。
「幼女型」が出てくる理由は深く考えないこと
ちなみに長谷氏は(本人も公言していますが)、「凄く若い女性」が大好きな方です。まあ、JSをメインヒロインにした「円環少女」を書いてしまったあたりで「さもありなん」という感じですが。
BEATLESSにも「スノウドロップ」という幼女型のhIEが登場します。他のhIEを「捕食」するというなかなかえぐい能力を持っているのですが、なぜ彼女が幼女の姿をしているのかについては、理由ははっきりと述べられていません。まあ、深く考えるべきではないということかもしれませんね。