エンタメ?純文学?魅惑の作家、山田詠美の作品3選~大人たちの恋愛編~

山田詠美は現代を代表する日本の女性作家。
1985年のデビュー以来、精力的に作品を発表し続け直木賞など数々の賞を受賞。
彼女の作品には大きく分けて二つの系統がある。大人の性愛を正面から描いたものと、思春期の子どもたちの瑞々しさを描いたものだ。
今回の記事では、前者の作品を紹介していく。

『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』

<あらすじ>
黒人との性愛を描いた短編集。

<読みどころ>
登場する黒人たちの陽気な性格が憎めない。たとえ浮気をされても不覚にもくすっと笑ってしまうような不思議な明るさが、彼らにはある。
悲恋に終わろうとも、そこには「素敵な恋だった」と思わせる何かがある。
著者によるあとがきには、自分の黒人に対する愛情や彼らに対する自身の恋愛観がストレートに楽しく書かれている。
また、村上龍氏による解説では山田詠美という作家について意気揚々と語れており、本編と合わせて読んでおきたい。

『A2Z』

<あらすじ>
出版社に勤める森下夏美は、ある日突然夫に不倫を打ち明けられる。夏美はショックを受けるものの、結婚関係は解消しない上にむしろ良好な関係を保つ。
実は夏美も年下の恋人を持っているのだが、やがて夏美の恋愛も夫に発覚し、物語は静かに収束していく。

<読みどころ>
終始、軽妙なリズムで進むところが良い。不倫の発覚なんて、どろどろした展開に陥りそうなのに全く悲壮感がない。登場人物に罪悪感がないわけではないのだが、どうしたって恋に落ちるときはあるのだという仕方なさを受け入れている。
夏美と年下の恋人のやりとりはほほえましく、時に切なく心をくすぐられる。「かわいいな、この子」と感じる女性も多いのではないかと予想される。
また恋愛だけでなく、仕事に邁進する夏美にバイタリティーも感じられるだろう。

『ジェントルマン』

<あらすじ>
主人公の夢生(ゆめお)は、同級生である容姿端麗な“ジェントルマン”漱太郎に惹かれていく。
ある日、学校に忘れ物をして部室に戻ろうとした夢生がある光景を偶然見てしまい、漱太郎の別の顔を知る…二人は秘密を共有し、夢生の漱太郎への愛は加速していき、物語は衝撃のラストを迎える。

<読みどころ>
ジョン・レノンとオノ・ヨーコの有名な一枚の写真の描写から始まり、そこから夢生と漱太郎の物語が展開していく。そのため読者は冒頭から一気に物語に引き込まれ、「この二人はなんだろう、一体何が起こるのだろう」とわくわくし、ページをめくる手が止まらないだろう。
非の打ち所のない漱太郎の裏の顔を知る度、果たして漱太郎はジェントルマンなのだろうか?という問いが浮かんでくる。ひたむきな夢生によって、その問いは確信に変わっていく。

表紙は作品のイメージを表すものだが、『ジェントルマン』も例外ではない。全体的に黒く塗られ、不揃いなアルファベットで「Gentleman」という文字が書かれた装丁は、物語の重厚さを窺わせる。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
山田詠美さんが描くラブストーリーは独特であり、しかし気を衒っていないので読みやすいと思います。
登場人物に共感するというよりは、「お話を楽しもう!」という感覚で読むと面白いです。
他にも山田詠美さんによる大人の恋愛を描いた作品はたくさんあるので、興味がわいたらチェックしてみましょう!

nesheba55okt9
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@nesheba55okt9

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