螺旋の神秘(2部)

螺旋とアート(1部)では、主に2次元の渦巻きについて考察した。
ここでは弦巻状に運動する、3次元での螺旋構造について。

螺旋と運動

猛禽類が空から獲物に近づくときに直線的に近づくことなく、空中でこの螺旋を描きながら旋回して近づいてゆく。
「用意周到」という言葉あるが、弧を描いて目的を観察しながら、仕損じることのないように狙いを定めて捕獲する。
螺旋という形状には円を描きつつ、しかし初めに回帰せず、上へと成長してゆく運動があり、
繰り返される運動律の中に、過去を乗り越える時間の流れがあり、歴史性が存在する。

ボルト、ねじの類も螺旋に掘られた溝によって生じる回転運動で部品の結合を緊密にする。

つる性植物はコイル状のつるで他の枝などに巻き付き、
自分の身体を支えて日光を効率良く得る。

螺旋階段

螺旋状の芸術品というと、やはり螺旋階段があげられる。
空間を贅沢に使い、芸術性にもすぐれた作品が多い。

バチカン美術館の2重螺旋の階段

螺旋階段は支柱を中心に緩やかに昇ってゆく。
昇降距離は多くなるが、眺望優れ、足の弱い人にも優しい。

螺旋の力動性

基本的には繰り返しの構造でありながら、同じ位置をたどらず、例えば無限に上昇する構造を歴史や生命になぞらえる例もある。

出典: ja.wikipedia.org

風が回転しながら移動する竜巻などは、大気が螺旋や渦巻き状に力動する自然の脅威だ。
地上に降りた軸の破壊力は凄まじい。

螺旋は、運動性や生命力を感じさせる面があるので、芸術作品などにおいては、様々な意味を込めた象徴、シンボルとして用いられることも多く、作品のタイトルとなっている例も多い

出典: ja.wikipedia.org

ウラジーミル・タトリン設計のロシア革命のモニュメント「第三インターナショナル記念塔」
巨大な螺旋の構造体が示す意味は、身分制から解放された人間という革命の概念である。
「閉じられた線」を示す円とは異なり、螺旋は渦巻きという無限発展的な軌跡を描きながら
高く昇ってゆく「開いた線」である。
3次元的に展開する運動である螺旋を、近代的な運動の象徴としてとらえ、記念塔の草案とした。

聖書の中にある有名な「バベルの塔」神に近づこうとする人間の思い上がりを戒める逸話。
螺旋状の道で天を目指す。
人類の発展した技術力を神に対して試そうとした果敢な試みともいえる。

「会津さざえ堂」は世界で唯一の二重らせん構造の木造建築物
白虎隊士19名の最期の地・会津若松の飯盛山
日本にも螺旋の形状に神秘的な象徴性を持ち、奇異な建築の試みがなされている。

keeper
keeper
@keeper

目次 - Contents