静かな救いを生み出す道尾秀介のオススメ小説3選
道尾秀介の小説は人を救うために描かれている。
そういった論調が世の中には多く、私もそれに同意する。彼の紡ぐ物語はハッピーエンドではない。しかし、それでも誰かが救われている。救われたことはハッピーエンドではなかったかもしれないけれど、しかしそれでも誰かの顔を上げさせる。そんな小説たちを紹介しようと思う。
向日葵の咲かない夏
私は見事に騙された。
この作品で私は道尾秀介の魅力に気づき、そしてはまりこんだ。油絵のような粘ついた文体に、薄雲が重なりどんどんと暗くなっていく視界。しかし、そこに差し込む一筋の光。これは一人の少年を救い出すための物語なのだろう。自分の中に閉じこもった彼の心を、救い出す物語だ。
そのトリックに言及されることの多い物語だが、その本質は救いだ。それを忘れずに、今作を読んでほしい。
シャドウ
幼い少年の心を覆い尽くす暗闇は深く、そして奇妙だ。この物語はそれらを取り除くために産まれた物語で、そして最後にはやはり驚愕が待ち受けている。
ギミックの粋を尽くしたこの作品は、最後の最後まで展開を読ませない。最後の一ページ、一行を読むまで、私たちは緊張を強いられ、そして読了後もその緊張は続き、しばらく放心せざるを得なくなる。
「影」と「陰」。両方の意味を持つタイトルが物語にくっきりとしたカゲを落として、私たちをそこに誘う。
水の棺
沈めたのは、過去とそして、あなた。
少年少女を物語の主人公に据えることが多くなった著作の傑作だ。嘘、見栄、そして消したい過去。未来から見た過去を想い、私たちは現実で間違いを犯し、そしてその間違いは未来へと響く。
様々な人たちの思惑が交錯し、また学校という閉鎖空間で行われる陰惨な出来事も目を逸らさずに描かれる。誰もが持つ見栄を、ダムに沈みゆく街に残して彼らは今日も生きていく。読後感は爽やかで、心の中を洗い流されたような気持ちになれる。
まとめ
いかがだったでしょうか。
稀代のストーリーテラー、道尾秀介の作品は、この他にも多数あります。正直、どれもおすすめです。
気になった方はぜひ手に取って、読んでみてくださいね。