吊るし雛

吊るし雛は春の女の子の節句に、贅沢な雛飾りを用意できない庶民の間で、発達しました。
福岡県柳川市では下げるもの、ぶら下げるもので「下げもん」。
静岡県東伊豆町では「雛のつるし飾り」、
山形県酒田市の「傘福(笠福)」という名前で伝わっています。

吊るし雛は始まりは江戸時代とされています。

女の子の健康や良縁、富貴など、幸福を祈って様々な意味の縁起物の小縫物をお節句に吊り下げた吊るし雛。
昔から高貴な家に生まれたお姫様の琴爪入れなどに使う袋物などや遊具の手毬を、
奥女中が作って贈り物にしたたしなみ事に由来しています。

女中の里帰りとともに庶民の里にもお祝いごとの際に広まり、
女の子の節句に端切れで作られるようになり、裕福な家ではお客を招いてひな壇の周りに飾られたり、
また、庶民の間では高価なひな壇の代わりにせめてものお祝いとして、子や孫の無病息災やを祈って作られました。

そのうちでも山形県の傘福は傘の下に布をめぐらし、その下に吊り下げられたのが特徴です。
いずれも手縫いで、人々が余った布や小物、ひもや糸を持ち寄って、様々に工夫を凝らした庶民の風習です。

柳川のさげもんは正式には約40cmの竹輪に赤白の布を巻きつけ、
細工ものと柳川まりを交互に7列7個の49個を全高150cm程に仕上げたもので、
その数には女性のたしなみを込めた意味が含まれています。
現在でも春の節句には柳川の良家でひな壇の周りに飾り付け、
観光客や訪問客に披露してもてなしています。

女の子の幸福を祈って、人々が願いを込めて一つ一つ意味を込めたもの

上の画像はほんの一例です。

鼠、犬(いぬ)馬、兎、鶴、亀、鶯、鶏、蝉、鯛などのおめでたい動物。
蕪、たけのこ、蓮根などの縁起物の野菜。
這い子人形、羽子板や糸巻き、お手玉、手毬、紙風船、草履、巾着、打ち出の小槌。
梅、桜、菖蒲などの花々。
赤い色には「厄除け」の意味がありますので赤い人形。
蛤(はまぐり)、うろこなど、子孫繁栄や縁起のいい動植物、
女性としてのたしなみや幸福に由来したもの、富、健康、運勢など、
下げるもののおめでたい意味をとらえたものが数多く考案されて、
受け継がれています。

つるし飾りの本場・伊豆稲取の「つるし雛」の男の子用です。
子供の無病息災・良縁等のたくさんの幸福を願って、金襴・錦・紗・縮緬等の布で作られています。
手縫いならではの暖かさを感じさせますね。
吊るし雛には、このように置物用に考案された形のものもあります。

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