僕の血を吸わないで(ラノベ)のネタバレ解説・考察まとめ

『僕の血を吸わないで』とは、阿智太郎によるライトノベル。第4回電撃ゲーム小説大賞の銀賞を受賞した作品であり、執筆当時はまだ高校生だった同作者のデビュー作である。吸血鬼をヒロインにしたドタバタコメディであり、破天荒ながらも愛らしいキャラクター造形で好評を博した。
高校生の花丸森写歩朗は、ハンターに追われる吸血鬼の少女・ジルと出会い、同情して彼女を匿う一方で「僕の血を吸わないで」と釘を刺す。森写歩朗の周囲の面々、ジルを追うハンター、恋心から森写歩朗の血を吸いたがるジルの、慌ただしい日々が始まる。

森写歩朗の所属する演劇部の後輩。物見高い性格で、森写歩朗を「見ている分にはおもしろい先輩」と認識し、彼の周囲のトラブルを観察している。
香と森写歩朗の微妙な関係のことにも気づいており、「2人がもし付き合ったらどんなカップルになるだろう」と夢想しつつ、ジルを含んだ三角関係にも興味津々な様子を見せた。

吸血鬼

クラレンス/クラレンス=レンバチュウーノ サカッチナイト カイタンホース コピマイ チラククルス アゲンスト

ブラックウイナーの下で働く吸血鬼。本名はクラレンス=レンバチュウーノ サカッチナイト カイタンホース コピマイ チラククルス アゲンストだが、長すぎるので作中ではもっぱらクラレンスと呼ばれる。
ジルを襲うが、彼女が森写歩朗の隣に居場所を見出したのを見て殺害を断念、ブラックウイナーを離反して街を去る。後に旅先で辰太郎と出会い、彼と結婚した。

サフィー/サファイア

ジルの姉にあたる吸血鬼。見た目は幼い少女だが、ジルの倍以上生きており、本性は老獪かつ狡猾。
ブラックウイナーに囚われてその先兵として動いていたが、その真の目的は「ジルが死んだと思わせて、ブラックウイナーから妹を守る」ことにあった。森写歩朗によって命を救われ、彼を気に入って花丸家に住み着く。

フロイ/フロイデッド・アブソリュート・アンキュサス・ブロード

ジルとサファイアを吸血鬼にした人物。このことから彼女たちからは“父親”として認識されている。本名はフロイデッド・アブソリュート・アンキュサス・ブロードで、通称フロイ。
物語開始前にブラックウイナーによって殺害されたと思われていたが、ギリギリで生き延びた上にたまたま死体の近くに怪我人が倒れ込んだことで息を吹き返す。娘たちの意思を尊重する一方、森写歩朗に「ジルが大切なら吸血鬼になる覚悟を固めろ」とも要求した。

ドクター・アラキ

ブラックウイナーの局長。自身もまた吸血鬼であり、「吸血鬼が増え続けることによる人類の滅亡」を危惧し、同族狩りを続けていた。
冷徹かつ冷酷な人物だが、意外と抜けたところもあり、クラレンスにつけた爆弾が故障していたことに気づいていなかった。

『僕の血を吸わないで』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

森写歩朗「僕が本気になって考えるとすごいよ」

クラレンスに追い詰められた森写歩朗は、ジルに向かって「僕が本気になって考えるとすごいよ」と自信満々に言い切り、状況を打開するための策を練り始める。
物語の主人公ならここで逆転の一手を閃くところだが、お気楽高校生の森写歩朗は全くそんなことはなく、ただ“この期に及んでアイデアが全然ない”ことを証明するのみだった。いかにも森写歩朗らしい、そしてこの作品らしい迷シーンだ。

フロイ「分かるな。死んでいる場合じゃないんだよ!」

アラキとの戦いで致命傷を負ったフロイは、それでもなお娘たちのために戦おうと立ち上がり、そこで“吸血鬼化した森写歩朗の遺体”を発見する。「結局はあの子の懇願を受け入れて同族になるのではないか」と、頼りない印象を抱いていた“娘が選んだ男”に笑みを向けたフロイは、ジルがこれからアラキと戦うこと、勝つ見込みは無いこと、その結果惨たらしく殺されるのは時間の問題であることを森写歩朗の遺体に向けて言い募る。
「分かるな。死んでいる場合じゃないんだよ!」とは、その際にフロイが口にした言葉である。フロイの娘への想い、自分はもう戦えないという無念、だからこそ娘が選んだ男に後を託すという決意が感じられる。この言葉を発した直後、フロイはどこか満足そうに息を引き取った。

森写歩朗「僕の血を…吸わないで」

物語の最後、森写歩朗がジルに告げた言葉。物語の始まりを告げる2人の約束でもあり、彼らが共にいるために誓った契約でもある。
つまりは「これからもずっと君といたい」という意思表示であり、事実上のプロポーズ。本作の最後の場面を彩るにふさわしい名シーンだ。

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