【おススメの小説】ファンタジーノベルの名作・山之口洋の「オルガニスト」
第10回ファンタジーノベル大賞を受賞した山之口洋のオルガニストの紹介です。バッハのオルガン曲をとおしたオルガニストの物語。ファンタジー、SF、ミステリーの要素も含んでいるどことなく不思議な質感が癖になります。
作者・山之口洋
本名野口 喜洋は日本の小説家、プログラマ。東京都出身で横浜市、浜松市、久留米市などを転々とする。東京大学工学部機械工学科卒業。専攻は自然言語処理など。1984年、松下電器産業に入社。
1998年、 『オルガニスト』で第10回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。2001年には松下電産を退社し、専属作家兼フリーIT技術者になる。また同年『われはフランソワ』が直木賞候補になる。
2006年、「紙のキーボード」の開発で情報処理推進機構(IPA)より「天才プログラマー/スーパークリエイター」に認定される。
現在、明治大学と東洋大学にて非常勤講師。
出典: ja.wikipedia.org
元々は完全な理系の技術者という珍しい経歴。普通は小説家になったら専念するものと思っていましたが、この方の場合、2006年には紙のキーボードを開発するという現役バリバリさを見せてくれています。
現在は家族で千葉県市川市の通称「行徳島」というところで暮らしている様です。
今の学生さんは実に真面目に授業に出てくる。体感でいえば私のころの倍くらい。ただ出てきて寝ている人も非常に多い。私のころは自主休講にしてしっかり家で寝ていた。
— 山之口洋 (@YoYamanoguchi) December 3, 2013
名作・オルガニスト
ドイツの音楽大学で教鞭をとるぼくに、一枚のディスクが持ち込まれた。ブエノスアイレスで活動するというそのオルガニストの演奏は、超絶的な技巧に溢れ、天才の出現を予感させたのだが…。最上の音楽を奏でつづけるために神に叛いた青年、そして哀切な終焉。バッハのオルガン曲の旋律とともに、音楽に魅入られし者の悦びと悲しみを描出する第10回ファンタジーノベル大賞受賞作。
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物語はバイオリニストのテオが語り部となって進んでいきます。ある日テオに持ち込まれた天才を予感させるオルガニストの音源から、物語は過去、現在を繋いだミステリーへと展開するのです。テオ、マリーア、ヨーゼフ、ラインベルガー教授といった中心人物に複雑に絡み合う人物が物語に深みをもたらしている様に感じます。音楽大学で出会った3人の仲間と教授、とある事件をきっかけに元には戻れなくなった関係。物語が現在と過去を行き来し、最後にはひとつになります。私がそのときに感じたのは感動なのか怖さなのか、今でも分からずに何度目かの読み返しをしてしまいます。
青春時代から大人になった自分と変わらない仲間という副題も含まれているような、少しほろ苦い物語です。
バッハを聞きながら読んでみたら存外楽しいかもしれません。
バッハのオルガンと一緒に……
この小説の主題でもあるオルガニスト、普通に考えるとオルガンを弾く人、いわゆる演奏家を想像すると思います。しかし、この小説で言うところのオルガニストはもうひとつの意味合いの方が強い(どちらの意味もあるが)と思います。教会でオルガンを弾くという専属のオルガニスト、宗教一体の性格を持つ一面がこの物語においてはキーとなっていると思います。
オルガニストは多くの場合、教会でのミサあるいは礼拝の伴奏を担当することを主な仕事とする。また演奏会を多く受け持ついわゆるコンサートオルガニストも多い。特にカトリックのミサやプロテスタントの礼拝では即興演奏をする場面も多く、そのため多くのオルガニストは優れた即興技術を身につけているほか、名のある教会のオルガニストに選ばれるためには既存のレパートリーをこなすだけでなくこのような即興技術も問われることになる。
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バッハのオルガンは美しいです。
宗教音楽としてのバッハのオルガンをオルガニストともに楽しんで頂ければと思います。