森鴎外の娘・茉莉が説く「にせもの贅沢」の格好悪さとは

森鴎外といえば、国語の教科書にも必ず載っている、近代文学を代表する文豪です。実娘である森茉莉さんは、いわゆる「耽美」的な文体が高く評価され、小説・エッセイ・翻訳と幅広いジャンルを股にかけたました。繊細で綺麗な言葉だけでなく、はっきりとした「考え方」も、彼女の持ち味なのです。

幼少期の生活

森鴎外の長女として産まれた彼女は、とにかく溺愛され、両親からも周りの人からも愛されて育ってきました。

娘が可愛くて仕方のない鴎外は、幼い頃から良い服を与え、良いものを食べさせ彼女の心身を育てあげてきました。

現在の御茶ノ水女子大学付属小学校にあたる東京女子高等師範学校付属小学校に入学も、学校の先生と衝突し中退するなどその様子はなかなか破天荒なものだったようです。

白百合学園高校を卒業してまもなく、フランス文学者である山田珠樹氏と結婚、フランスでの生活をはじめるなど「いかにも文学者の娘」というような順風満帆な生活を送っています。

しかし彼女の魅力は「ひけらかさない」こと!

むしろ、高価なものを見せびらかし、他人を見下す行為を「貧乏臭い」と一蹴しています。

彼女いわく「贅沢というのは高価なものを持っているということではなく、贅沢な精神を持っているということ。ほんとうの贅沢な人間は贅沢ということを意識していないし、贅沢のできない人にそれを見せたいとも思わない」のだそう。

「贅沢論」の影にある、苦しい生活

彼女は、決して生涯を通して贅沢ばかりをして甘い蜜ばかりを吸っていたわけではありません。

芸者遊びの激しい旦那との離婚、再婚からふたたびの離婚、そして鴎外の死後、印税収入が入らなくなり生活苦に喘ぐ……など、波乱の人生を送った経験が「贅沢」と「貧乏」について思いを寄せるきっかけになったのでしょう。

彼女が筆を握ったのは生活が苦しくなってからのことで、54歳で鴎外に関する随筆である「父の帽子」を出版しました。

その後、美しい少年を中心とした「JUNE」の先駆けとも言える長編小説をいくつも発表し、人気を呼びました。

そのうちの一つ「枯葉の寝床」は特に耽美的な色が濃く、エロティックな作品。
そして、美輪明宏さんに「ベッド・シーンに実感がある」と言わしめた作品でもあります。

作品に対する評価を受けながら自らも思想を言語化し、身の回りの批評をしていった彼女のたくましさは、今を生きる人たちにとっても価値のあるものと言えるでしょう。

keeper
keeper
@keeper

目次 - Contents