ハイカルチャーの和歌や漢文とはまた違うサブカルチャーの源流として現れた今様。院政を敷いたことで有名な後白河法皇はこの今様をこよなく愛し、『梁塵秘抄』としてまとめました。
梁塵秘抄の名前の由来
〈昔、虞公(ぐこう)と韓娥(かんが)と言う、聞く者は涙を流さずにはいられないほど非常に美しい声を持つ者がいた。彼らが歌うと、その響きによって梁(うつばり)の塵は舞いあがったまま3日は落ちてこなかった…〉
と言う故事成語からとられています。
個性強めの収録歌
伊勢の海に朝な夕なに海人の居て 採り上ぐなる 鰒(あわび)の貝の片思いなる
意訳;わたしの恋は 片思い 伊勢の海に 朝にも 夕にも 漁どる海人が 海から採り上げるアワビみたいに (川村湊さんの訳を引用)
アワビ=わびしいにかけていて、当時の歌の片思いの象徴だそうです
鈴はさや振る 藤太巫女(とうだみこ) 目より上にぞ 鈴は振る ゆらゆらと振り上げて 目より下にて鈴振れば 懈怠(けだい)なりとて 神腹立ち給う
訳;鈴を振ってる 巫女さんよ 鈴は目より上にあげて振るものなのに あれあれ ゆらゆら 振り上げて 今度は目の下あたりで振っている 疲れちゃったのか物憂そう それじゃあ だめだめ 怠けていると 神さまが 腹を立ててしまいます (川村湊さんの訳を引用)
お神楽を舞い鈴を振る巫女を見た見物客の感想の歌。やりゃいいだろう感に〈もっと真剣にやれよ〉とケチつけている様子
東(関東)には女は無きか男巫子 さればや神の男には憑く
訳;関東には女はいないのか?そうなったら神は男を選びなさるのか?
昔は神の遊女と呼ばれた巫女。男のシャーマンと言うのは暗に神の陰子なのでは?と言う冷やかしを含んでいます。
恋しとよ 君恋しとよゆかしとよ 逢わばや見ばや見ばや見えばや
訳;恋しいの、あなたが恋しい愛しいの 逢いたい抱きたい逢いたい抱かれたい…
女性目線からの恋の歌。西○加奈を連想させます。
まとめ
今からざっと900年ちょっと前の時代ですが、流行歌にはラブソングが多く、そして言ってることも現代とあまり変わらないのが印象的。J-popの源流が感じられる、そんな歌集でした。
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