摩耗した精神にそそぐ愛の物語、『罪と罰』

ドストエフスキーの代表作の一つにも挙げられる『罪と罰』。重い題名ではありますが、執筆当時ジリ貧だったドストエフスキーが贈る、どこか温かみすら感じられる哲学を内包した"赦し"の物語です。

あらすじ・ストーリー

虚無的で貧乏な大学生のラスコ―リニコフ。彼はカツカツな生活の中で「社会的に無価値な人間からは金を、ことによれば命も奪っていい」と独自の哲学を編み出し始める。

そして性悪の金貸し老婆を殺して金品を奪う計画を立て、実行したラスコ―リニコフ。しかし彼は勢い余って金貸し老婆の妹に当たる、罪のない女性までも殺害してしまった。予想だにしなかった罪悪感に追い詰められた彼は、動揺から盗品も捨て去ってしまう。

徐々に自身の状況をごまかしきれなくなり、警察からの嫌疑と自身の罪悪感から心身ともに消耗し始めるラスコ―リニコフ。そんな中で彼は知人の娘にあたる娼婦のソーニャと出会う。

〈全ては神のみ手にある〉と語る清らかで素直なソーニャ。彼女の愛に触れたラスコーリニコフは散々苦しむが、全てを受け入れて老婆殺害の一切をソーニャに告白する。そして彼は警察に出頭し自首、シベリア送りとなる。

モデルとなった事件

この物語は連載開始前の1865年に起きた、ラスコーリニキ(ロシア正教の一派)の青年ゲラシム・チストフが金品略奪を目的に老婆を殺害した事件からインスパイアされたと言います。

また、この時期ドストエフスキー自身がシベリア流刑からの労苦と体調不良、さらに賭博で無一文になったことから精神的に追い詰められていたそう。納得の〈鬼気迫る精神的ジリ貧〉描写です。

実写映画

1970年、ソ連版の『罪と罰』。ベードワ演じるソーニャと、タラトリキン演じるラスコーリニコフ。

幾度となく映画化されている人気作品で、最近だと2003年にも映像化されています。上記のタラトリキンは、原作ラスコーリニコフ同様の〈栗色の髪に黒い瞳を持つ美青年〉である上に、罪の重さに狂いかける学生の姿をも好演しています。

まとめ

連載開始の日からもうすぐ150年になろうとするこの作品。重苦しくも、天使のようなヒロインの助けを借りてか、読後は爽やかなのが印象的です。多彩なコミカライズ、映像化、様々にメディア展開されている作品で、どこからでも入れる親しみやすさがあるのも特徴的です。

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