「早く撃て!」映画やドラマでなかなか引き金を引かないワケ
映画やドラマなどで、主人公が銃を構えるもなかなか引き金を引かず、「何をしてる!早く撃て!」などと言われている場面を誰でも一度は見たことがあるだろう。ここでは戦場で兵士に起きる心理を中心に、主人公がなかなか引き金を引かない理由を紐解いていく。
なぜ主人公は、いつまでも引き金を引かないのか
「なぜ、映画やドラマで敵の弾が味方に当たらないのか」
「なぜ、いつ死ぬか知れない戦場で兵士が荒々しいのん気な冗談を言っているのか」
「なぜ、鬼軍曹がいつも訓練中に顔を近づけてボロカスに罵るのか」
我々が「所詮映画だから(笑)」と思い込んでいたベタなシーンの数々は、実は単なるフィクションのご都合主義ではない、リアルな描写なのである。
戦争における「人殺し」の心理学
第二次世界大戦時の発砲率は15~20%
戦場では自分の命に危険があっても、なかなか敵を殺すことができない。
ゲティスバーグの戦場に、弾が込められたまま発射されていない銃が12000丁も残されていた。
敵との遭遇戦に際して、火線に並ぶ兵士100人のうち、平均にしてわずか2割程度しか敵に向かって銃を発砲していない。
残りの者は伝令を務めたり、弾薬を補充したり、負傷者を手当てしたり、目標を観察するといった「必要不可欠な」任務を遂行したがる。
人を撃つのが当たり前な戦争であっても、人を殺したがらない受け身の兵士が多い。
第一次大戦、第二次大戦、ベトナム戦争、また古代の戦争でも同種の傾向が存在した。
なぜ兵士は敵を殺せないのか
たとえばネコとネコ。
もしくはカブトムシとカブトムシ。あるいはザリガニとザリガニ。
それら闘争を始めるとき、戦闘を避けるための無意識的な威嚇行動を取る傾向がある。
同胞にかぎって自分の強さをアピールする傾向が高い。
面白いことに、どちらかが不利だと悟ったら片方は腰をひっくるめてその場から逃げ出してしまう。
対立を解決するには、闘争か逃避のたったふたつしかない。