狂気?芸術?シュヴァルの理想宮
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19世紀、フランスの片田舎に住む平凡な郵便配達夫が、たった一人で壮大な宮殿を作り上げました。周囲の人々から理解されず馬鹿にされながらも作り上げた彼の建築物は、今日ではアウトサイダーアートとして評価されています。
無学な郵便配達夫
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フェルディナン・シュヴァル(1836-1924)は、
フランスのドローム県オートリーブ地域の小さな村で生まれました。
13歳の頃から徒弟奉公で働き、1864年から郵便配達夫
として働き始めました。彼は毎日歩いて郵便配達をしながら
空想の翼をはためかせていました。いつかおとぎの国の宮殿で
幸せに暮らす夢です。彼は誰にもこの話を語ったことはなく
自分だけの胸に秘めていました。
しかし1879年のある日、配達中に変わった石に躓いて
転んだことで人生の転機が訪れました。彼はその石を家に
持ち帰り、仕事中に少しずつ石の収集をするようになったのです。
時にシュヴァル43歳でした。
どんどん集まる石たち、やがて…
このときから彼は仕事中に見つけた様々な石を
はじめはポケットに、後にはバスケットに、
そして最後は台車を用い、仕事以外にさらに10kmも
歩いて回収し、それを夜に積み上げ始めた。
村の住人たちは一人で奇怪な建築を造り続ける彼を
馬鹿者呼ばわりした。上司である郵便局長からも
行動を問いただされたものの、シュヴァルは
その趣味に情熱を燃やすのをやめることはなかった。
※画像はシュヴァルが最初に躓いたソロバン状の石
建築への情熱
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石を集めて積み上げ始めて20年間は、ほぼ城の
外観デザインに費やされました。デザインはヒンドゥー教の
寺院や神話などからヒントを得ているといわれています。
無学で建築の知識もなかったシュヴァルが、どうやって
外国の建築物を真似られたのか疑問に思われていましたが、
彼は外国から送られてくる珍しい絵葉書などを参考にして
いたといわれています。
※地元で「有名人」となり絵葉書になったシュヴァル
ついに完成した理想宮
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石を積み上げてから苦節33年、ついにシュヴァルの
「理想宮」が完成しました。
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イースターのモアイのような、奇妙な巨人像。
建築の素人が作ったとは思えないほど、緻密です。
訪問者はバルコニーに上がることもできます。
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シュヴァルの死後、シュールレアリズムの詩人ブルトンに
見出された理想宮は、高い評価をされるようになりました。
現在はフランス政府から保護され、多くの観光客も
訪れています。
壁や天井のあちこちに、シュヴァルは短い章句を
書きこんでいるのですが、どれも厳しい周囲の視線を
ものともせずに自分の意志を貫こうとする
強烈な矜持に溢れています。左の写真の
「目的のない人生は幻である」という文句に、
シュヴァルの生きた孤独を思わずにいられませんでした。
自分と家族の墓所
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シュヴァル自身は理想宮に住む事はありませんでしたが、
理想宮の地下に自分と家族が永眠するための墓所を
作ろうとしました。しかし、教会や地元住民の反対に合い
理想宮を墓地として使うことは断念しました。
その代わりに村営の墓地に理想宮に似た形の壮麗な
霊廟を建てました。
観光客の撮影した動画