東方鳩（ジョジョリオン）の徹底解説・考察まとめ

東方鳩の概要

東方鳩（ひがしかた はと）とは、『ジョジョの奇妙な冒険 part8 ジョジョリオン』の登場人物。東方家の現当主・東方憲助（ひがしかた のりすけ）とその元妻・東方花都（ひがしかた かあと）の長女。第2巻で東方定助（ひがしかた じょうすけ）を家族として迎えるにあたり、全員で写真を撮るために家族が集合した時に初登場。以降は定助が東方家で生活していく中で、弟である東方常秀（ひがしかた じょうしゅう）や妹である東方大弥（ひがしかた だいや）と共にコメディリリーフとして度々登場するものの、本作のメイン要素と言えるロカカカ（食べたものの怪我や病気を他の健康な部位と等価交換するという形で治療できる謎の果実）の争奪戦に参戦することはなかった。しかし、ロカカカ密売団のリーダーである田最環（だも たまき）戦にて参戦。田最は鳩のボーイフレンドであったが、東方家に潜入するために鳩を騙して近づいていたのだ。鳩は本気で田最を愛しており、裏切りによって深く傷つくも、涙ながらにこれを撃破。本格的な参戦はこれが最初で最後だが、ロカカカ争奪戦が終結後も生き残る。長男の東方常敏（ひがしかた じょうびん）は戦いの中で死亡してしまったため、東方家の長子となる。
スタンドは折り紙の形をした「ウォーキング・ハート」。自分の踵を硬質化し、約4メートルまで伸ばすことができる能力を持つ。靴を履いている場合は靴の踵部分も一緒に伸びる。踵を伸ばすだけという単純な能力であるが、硬質化の強度は非常に高く、人体程度ならば骨ごと簡単に貫通し、コンクリートの壁にすら穴を開けられるほど。東方家のスタンドは直接的な戦闘を行える者が鳩の他には憲助と常秀くらいしかいない（この2人も得意とは言い難い）ため、近中距離戦となった時は貴重な戦力となる。

東方鳩のプロフィール・人物像

東方家の家長・東方憲助（ひがしかた のりすけ）とその元妻・東方花都（ひがしかた かあと）の長女。年齢は24歳。自分を含めた4人兄弟の2番目でもあり、兄に長男の東方常敏（ひがしかた じょうびん）、妹に東方大弥（ひがしかた だいや）、弟に東方常秀（ひがしかた じょうしゅう）がいる。職業はモデルであり、雑誌の表紙を何度も飾っていたり、荒川静香（実在のスケート選手であり、2006年に開催されたトリノオリンピックの金メダリスト）とアイススケートをしたりとかなり売れている様子。年齢の割には子供っぽく、大弥や常秀とよくボケをかまして周囲を和ませている。また、能天気で物事を考えることが苦手であり、「真珠湾って漢字で書くから」という理由でハワイが日本だと思い込んでいたほど。流石にその際は憲助も「オレの娘がこんなにもバカだったとは」と嘆いていた。一方で、先入観を持ったり疑ったりすることなく人と接することができる性格である。それ故、素性もわからず突然東方家にやってきた定助に対しても最初から好意的に接していた。また、常に能天気というわけではなく、いざという時は真剣になれる。服役していった母の花都が家族の前に姿を現した時や、常敏が戦死して兄妹で最年長になった時は、年長者として弟たちを引っ張る振舞いを見せている。
モデルだけにスタイルは抜群であるが、妹の大弥よりも胸が小さいことが作中で言及されている。母である花都曰く、「東方家の女性は20歳まで巨乳でその後は小さくなっていく」とのことであるので、昔は違った可能性はある。父である憲助は上述の通り頭の悪さには呆れながらも彼女を溺愛しており、鳩が田最環（だも たまき）をボーイフレンドとして連れてきたときは、「鳩が選んだ人と一緒になってもらうのが一番だ」と、シャンパンを酌み交わしながら歓迎していた。一方で、鳩が田最との性行為の経験等を匂わせて目の前で惚気ていた時には、「それ以上はオレの前では許さん」と、大切な娘を取られることに激昂しそうになっていた。

東方鳩の来歴・活躍

初登場〜エイ・フェックス兄弟戦

本作の主人公である東方定助（ひがしかた じょうすけ）は、記憶喪失で天涯孤独の身の上とされていた。その境遇を哀れまれて東方家に迎え入れられる。「家族が増えた記念に」と、家長の東方憲助（ひがしかた のりすけ）が家族の集合写真を撮ろうとした時に、他の家族と一緒に鳩も初登場する。ただしこの時は長男の常敏（じょうびん）が不在であり、「長男がいないんじゃ家族写真の意味がない」と撮影は中止された（後に改めて撮影したようで、定助を含めた家族写真が作中に登場する）。程なくして定助は自分の記憶を求めて戦いに身を投じることになり、憲助らと協力しながら、八木山夜露（やぎやま よつゆ）、大年寺山愛唄（だいねんじやま あいしょう）、エイ・フェックス兄弟といった強敵たちを次々と打ち倒す。しかし、この時点での鳩は戦闘に参加することがなかった。というより、そもそも定助がそのような戦いをしている事そのものを知らなかった。
この頃の鳩は弟である常秀（じょうしゅう）や妹である大弥（だいや）と共に所謂コメディリリーフといった立ち位置であり、日常のギャグシーンでの見せ場が主だった。ある朝に常秀が髭を剃っていた時に定助も同じく剃ろうとカミソリを借りた。記憶を失っているからか、その剃り方は顔を傷つけるような危なっかしいものであったが、「触れたものを奪うしゃぼん玉を出現させる」能力を持つスタンド「ソフト&ウエット」で髭を顔から奪うことで無事に終える。「ソフト&ウエット」で奪ったものは、そのしゃぼん玉を再度接触させた場所に移し替えることができるのだが、それによって鳩の顔は常秀と一緒に毛だらけになってしまった。狼狽えつつも2人で笑い合う朝の一幕といったシーンが初期の鳩の見せ場だった。

田最環戦

物語が進むにつれ、本作におけるキーアイテムと言える謎の果実・ロカカカを巡って、岩人間（姿形は人間と同じだが体がケイ素で構成されている等の特徴を持つ別種の生物）との戦いが激化していった。ロカカカとは、その実を食べれば医学では治療不可能とされる怪我や病気さえも治療できる効果を持つ果実である。ただし無条件で治せるというわけではなく、他の健康的な部位が石化してしまうという代償がある（作中では等価交換と呼ばれる）。定助が東方家の家族と協力しながら倒した八木山夜露（やぎやま よつゆ）、大年寺山愛唄（だいねんじやま あいしょう）、エイ・フェックス兄弟も、ロカカカを密売していた岩人間側の刺客だった。自分たちが独占して利益を得るために、ロカカカの秘密を知る者を抹殺しようと襲いかかってきたのである。
そんな中、鳩が家族に紹介するためにボーイフレンドを家に招いた。彼の名は田最環（だも たまき）といい、便りなさげな様子に憲助たちから少し不安を抱かれるも、「鳩本人が選んだ相手が一番」と、和やかな雰囲気となっていた。そんな中、田最がトイレに立ち、トイレの場所を案内した常秀の体に異変が起こった。体がまるでスライムのようにドロドロになり、次第に水道の水が体を貫通するほどになっていき、最後はその水ごと排水溝に流されてしまった（後に命は助かっていた）。時を同じくして、東方家の家政婦である虹村京（にじむら けい）も体をドロドロに溶かされており、それに気付いた定助が警戒するも時すでに遅く、大弥までも同様に溶かされた。実は田最の正体は岩人間であり、前述の岩人間たちを束ねるロカカカ密売グループのボスだった。鳩を利用して東方家にまんまと入り込んだのである。その目的は、かつて自分達からロカカカの枝を盗み出した青年・空条仗世文（くうじょう じょせふみ）を探し出すことだった。自らのスタンド（part3以降のジョジョシリーズに登場する能力の名称であり、能力者の生命力によって発現する物理的な作用をもたらす幻影。一部の例外を除いて能力者以外には視認できない）・ビタミンCの能力で鳩を除く東方家の全員を無力化し、家長である憲助に仗世文のことを聞き出さんと拷問にかける。それでも憲助は口を割らなかったため、田最は「娘を目の前で殺す」と脅しをかける。鳩をあえて溶かさずに放置していたのは、憲助への拷問に使うためだったのである。流石にそれには耐えられず、憲助は「定助こそがロカカカと壁の目（そこに埋められたものを融合させる不思議な土地。東日本大震災で隆起した）の相乗効果で変異した仗世文本人である」と吐いてしまう。
この時、鳩は少し離れた玄関におり、溶かされた定助を目の当たりにしていた。定助から田最の正体と目的を聞かされ、リビングから拷問を受けている憲助の叫び声が聞こえてくるが、それでも「環ちゃんは私を騙してなんかいない。それは何かの間違い」と、田最のことを庇っていた。事を確かめるためにリビングに向かった鳩は拷問されている憲助の姿を発見し、さらに自分もビタミンCの能力で溶かされてしまう。それでも田最が自分を騙していたなどと信じたくなかったが、田最は無情にも「私が歩くのに邪魔だろうが」と、鳩を足蹴にし、定助を始末するために玄関へ向かった。
田最は玄関にて、既に術中に嵌めていた定助の体を切り刻む等、甚振りながら殺そうとするが、窓の外に突如として鳩が現れる。定助は鳩が溶かされたことを利用し、しゃぼん玉を生成するスタンド「ソフト&ウエット」を使って煙突を通して鳩を外に出したのだ。ビタミンCの射程の外に出た鳩の体は瞬時に元に戻り、自らのスタンド「ウォーキング・ハート」を使って、硬質化させた踵で田最を刺し貫いた。この時、鳩の目には涙が浮かんでおり、また表情は悲しみに満ちていた。定助は田最に、「鳩ちゃんは溶かされるまでずっとあんたのことを信じて庇っていた」と罪を突きつけ、鳩もまた覚悟を決めて涙ながらに田最を何度も貫いた。大きなダメージを受けた田最だが、「仗世文を探し出すのが目的であって君の家族には危害を加えるつもりがなかった」「君のことは心から好きなんだよ」と鳩の動揺を誘おうとする。しかし鳩はもう騙されず、近づかずにトドメを刺すために家の屋根の上に登った。田最は作戦を変え、憲助の体を着火することで叫び声を上げさせて鳩を煙突付近に誘き出し、再びビタミンCの能力に嵌めようとした。だが鳩はそれに乗らず、定助が家の中から音で合図を送るのを手がかりに、頭上から田最の脳天を貫くのだった。田最は岩人間の生命力ゆえに死亡こそしなかったものの、もはや戦闘続行は不可能なほどの重症であり、スタンド能力の維持もできなくなった。命からがら外に逃げるも復活した定助に追い詰められる。「ロカカカを輸入できるのは私だけなのだからお前は私と組むべきだ」と醜く命乞いをするが、一家全員を危機に晒し、鳩の気持ちを弄んだ田最を定助が許すはずはなく、頭を粉砕されて田最は完全に死亡した。
危機は去ったが、心から信じていた恋人に裏切られた鳩の気持ちが晴れることはなく、その表情は終始悲しみに満ち、とめどなく涙を流していた。

ロカカカ争奪戦を見守る

田最環との戦いの後は、鳩はロカカカを巡る戦いには全くと言っていいほど関わらない。もっとも、これは鳩に限ったことではない。東方家長男である常敏、その妻である密葉（みつば）、2人の息子であるつるぎの3人がロカカカ争奪戦における中心人物となっていき、鳩も含めた他の家族はほとんど物語の表舞台には出なくなる。せいぜい東方家一掃を企てたプアー・トム戦、黒幕である透龍（とおる）戦において攻撃に巻き込まれるだけであり、スタンドも二度と登場しなかった。

全ての決着後

激戦の末についに黒幕である透龍が倒れ、ロカカカを巡る戦いは決着した。東方家では退院してくる憲助を祝うためにパーティーが開催されようとしていたが、場の空気は重いものだった。この戦いで東方常敏（ひがしかた じょうびん）と東方花都（ひがしかた かあと）が犠牲となったためだ。鳩にとっては兄と母を失うという悲しい結末となった。仲の良かった常敏はもちろんのこと、花都に対しては殺人を犯して服役して自分達をほったらかしにしたと憎んでいたが、実は家族のために殺人の汚名を被っていたと知った。だがその場で死なれてしまったため和解することも叶わなくなってしまった。しかし、悲しみの中にも希望は見いだせていた。常敏の息子である東方つるぎは肌の状態がとてもいい健康体でこの場にいた。東方家の長男は、10歳になると記憶がだんだんと失われ、肌が石化する原因不明の奇病に代々見舞われていた。一族は代々この病気を治す方法を探していたが、今回の戦いで花都がロカカカを用いてつるぎの病を透龍に移したことでつるぎの病は完治した。健康的な状態で生きているつるぎこそが、長年侵されていた奇病という呪いを断ち切った、東方家の希望の象徴である。このパーティーは退院祝いであると同時に、東方家の新しい始まりでもある。そこには常敏に代わって兄妹で最年長となった鳩が、パーティーの意味を家族に毅然と説く姿があった。憲助が後見人となって新しく家族として迎え入れた定助（養子縁組をしているかは明言されていない）を迎え、家族全員で新しい道へと歩みだすシーンでジョジョリオンの物語は終了する。

東方鳩のスタンド：ウォーキング・ハート

スタンドとは

ジョジョシリーズにおける能力の総称。初登場したのは『ジョジョの奇妙な冒険 part3 スターダストクルセイダース』。『ジョジョの奇妙な冒険 part1 ファントムブラッド』と『ジョジョの奇妙な冒険 part2 戦闘潮流』においては、「波紋（はもん）」という別の能力が登場しており、スタンドは出てこない。
人間（実際には犬等、人間以外の生物もいる）の精神エネルギーが作り出すパワーあるヴィジョン。言うなれば、形を持った守護霊のようなもの。人型に限らず様々な形がある。スタンドを使役する者をスタンド使いと言う。一部の例外（第5部の「ノトーリアスB・I・G」等）を除きスタンド使いとスタンドは一心同体と言える存在であり、スタンドが傷付けば本体も同様に傷つき、スタンドが破壊されれば本体も死亡する。逆にスタンド使いが死亡すればスタンドも消滅する。スタンドの像はスタンド使いでなければ見ることはできない。また、基本的にスタンドはスタンドでなければ倒せない。たとえば銃弾といった物理的な攻撃をスタンドに対して行ってもすり抜けてしまい効果がない。ただし物体（人体等の生物の一部も含む）と一体化しているいるスタンドは例外的に物理的な干渉が可能である。
発現する条件は先天的なものと後天的なものがあり、後者は複数の方法が確認されている。特製の鏃で体を傷つけて生存する（4〜6部）、「悪魔の手のひら」と呼ばれる特殊な地形に迷い込んで生存する（7部）、技術を極限まで高めた結果としてスタンドに昇華する（7部）、聖なる遺体の力で能力を得る（7部）、「壁の目」で謎の歯形がついて身につける（8部）等がある。名前の由来は3部〜6部においては「そばに立つもの（stand by me）」という意味であり、7部・8部においては「立ち向かうもの（stand up to）」とされている。

能力

踵を硬質化させて伸ばす