クミカのミカク(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『クミカのミカク』とは、小野中彰大によって2015年から『COMICリュウ』連載されていた、グルメ・恋愛などをテーマにした日常系漫画作品である。異星人が珍しくなくなった地球で、食事を必要としないタイプの異星人・クミカがひょんなことから初めて地球の食べ物を食べることになり、様々な感覚と新しい感情に目覚めていく様子を描く。まじめでちょっと不器用なクミカの成長と、彼女を取り巻く人々との交流が魅力的である。

『クミカのミカク』の概要

『クミカのミカク』とは小野中彰大(おのなかあきひろ)により2015年から『COMICリュウ』で連載されていた、グルメ・日常・恋愛などの要素を含むほのぼのとしたストーリーが特徴の漫画作品である。銅龍賞を受賞した同名の短編が元となっている。異星人が珍しくなくなった地球で、食事が必要ない異星人の女の子・クミカがひょんなことから初めて地球の食べ物を食べることになり、様々な感覚と新しい感情に目覚めていく様子を描く。略称は「クミミカ」で、ファンの間では「クーデレ異星人meet地球食」というキャッチコピーも使われる。題材としては異星人と地球人の交流や食べ物の魅力、恋の成長などが挙げられる。この作品は、読者に食べ物の楽しさや大切さを伝えるとともに、異文化や異種族との共生の可能性を示す影響を与えた。
この作品の魅力は、クミカの純真な目線から見た地球の食べ物や文化に対する驚きや感動が伝わってくることである。クミカは食べることに興味がなかったが、チヒロという先輩に誘われて食べ物を口にすると、それがきっかけで彼に惹かれていく。チヒロもまた、クミカの反応に興味を持ち、彼女に色々な食べ物を教えてあげる。二人の関係は、食べ物を通して徐々に深まっていく。食べ物は、人と人との絆を作る力があるというメッセージが込められている。
またこの作品は、異星人と地球人の違いや共通点を描くことで、人間の多様性や個性を尊重する姿勢を示している。クミカは自分とは違う生き方や考え方を持つ地球人に対して、偏見や拒絶ではなく、理解や受容を試みる。地球人もまた、クミカの特徴や能力を受け入れて、彼女を仲間として扱う。異星人と地球人の間には、時に衝突や誤解が起こるが、それを乗り越えて友情や恋愛が芽生える。異なる種族や文化が共存することの困難さや価値を描くことで、読者に対話や協力の重要性を伝える。
このように、『クミカのミカク』は、食べ物や恋愛を通して、人間の感性や関係性を探求する作品である。読者は、クミカの目を通して、地球の食べ物や文化に対する新たな視点や感動を得ることができる。また、異星人と地球人の交流を通して、人間の多様性や共生の可能性を考えることができる。この作品は、食べ物や恋愛という身近なテーマを用いて、人間の本質や社会に対する深い洞察を与える作品である。

『クミカのミカク』のあらすじ・ストーリー

クミカの食事デビュー

クミカは空気中の微生物や花粉を栄養とする異星人で、出流原(いずるばら)デザイン事務所で働いている。食べない分、仕事はそっけない態度なのだがバリバリとこなす。節電と称して、電気と暖房をつけないほど徹底している。彼女の母星第2クロロジウムは貧しい星で、誰もが痩せた土地からわずかな資源を採掘して生計を立てている。クミカの両親もやっと貯めたお金でクミカを地球に送り出してくれた。その恩に報いるためにももっと稼がねばならないのだ。
次の日、クミカは暖房を切っていたせいで風邪をひき、マスクをするも倒れこんでしまう。クミカに気がある先輩のチヒロに家まで送ってもらうが3日間休み、みんなが心配する。そこへ「何かあったら電話して」と電話番号を教えていたチヒロの攜帯に、「助けて…」とクミカからのSOSのメッセージが送られてくる。チヒロが駆けつけてみるとひどい状態で、介抱している間にクミカのお腹が鳴っていることに気づく。ウイルス除去率100%のマスクをしているせいで微生物をろくに吸い込めないせいだった。そこでチヒロは鍋焼きうどんをクミカにつくってあげる。はじめ拒絶するが、身体は欲しがって触手がチヒロの腕に絡みつく。恐る恐る食べてみて、初めての感覚に触手が光出す。心地よさを目一杯表現して、あっという間にペロリと平らげてしまう。これがクミカの食事デビューであった。その後もお腹が鳴っていたが、理由にもチヒロの好意にも気がつかない。
次の日、みんながHOKAHOKA弁当を食べている場で、クミカがお腹を鳴らしてしまう。みんながいなくなった後でチヒロがHOKAHOKA弁当を持ってきて、「食べようよ」と誘う。我慢していたクミカだったが、結局手を伸ばし、口にして「この感覚は…忘れられない…っ」と食べる喜びを体感する。またもや触手が喜びに達し、光出す。
それからHOKAHOKA弁当・ココア・後輩たちのミムラとエイリアとの3人での女子会での手巻き寿司、チンジャオロースや初めての本格的な料理カツサンドを通して、新しい感覚・喜びを体験し同僚との仲も深めていく。牧場の取材では、牛を見てからステーキを食べる段になっていっとき拒否するも、牧場で働いていた外星人のエピーに「命を愛情を持って接して、頂くんです」と言われて認識を改める。
出張から会社に帰ってきたクミカと同期のキヨシゲが、酒の席で食べる姿を魅力的に感じたクミカに告白する。後日、花見の席で酔っている状態で、「仕事仲間だからお断りします」とキヨシゲを振る。酔ったクミカは触手が暴走し大量増殖して暴れ出す。チヒロが助けようとして飲み込まれ、「君のことが大好きだ」と言ったことで暴走は収まる。しかしクミカは酔いが覚めるとその時の告白は覚えていないのだった。

クミカの恋の予感

会社の上司イズルがヴリドラ航星社のご令嬢ハルニとお見合いすることになり、イズルが実は大企業の出流原重工の御曹司であることがわかる。通訳が来れなくなったので、クミカに通訳を頼む。気が進まないイズル。父が「早く決めてしまえ」と急かすが、気に入らないイズルは父を吹っ飛ばしておじゃんにする。その時「あんたに似合う男は星の数ほどいるからよ」とお見合いをお仕舞いにするが、ハルニはそのセリフでイズルに惚れてしまう。
後日ハルニが単身事務所へ行くが、従者のメギアが探しにきて、クミカに匿ってもらう。イズルは外回りでいなかった。探しに行くが、なかなか見つからない。小腹が空き、2人で醤油ラーメンを食べた後、ハルニが「クミカさんわたくしは宗一郎様のことが好きですわ」と言う。「あなたにもそんな方はいますの?」と聞かれ、クミカはドキッとする。
この時、初めて恋というものを意識する。会社でチヒロと会うと、ハルニに聞かれた時、チヒロの顔をどうして思い出したんだろうと意識してしまう。意識して仕事がうまくいかず、チヒロにろくに手がつかない仕事を手伝ってもらう間中、「この人の何を知っているんだろう」と考えてしまう。
その夜、チヒロと洋食屋でオムライスを食べるが、チヒロのことが気になって味がよくわからない。「どうしたの」と気遣ってくるチヒロを振り切って、雨の中1人で出ていってしまう。迷いゆく中、チンジャオロースをつくってくれた店の店主に出会う。風呂と服をお世話になった後、店主はクミカの「チヒロに恋しているのかどうかわからない」という話を聞き、チヒロの昔話をする。チヒロは高校生の頃“血濡れのチヒロ”と呼ばれ、荒れていた。同級生だったイズルはチヒロが気になって声をかけ、実は苦労人であると知る。チヒロの両親は宇宙へ共働きをしており、チヒロは独り暮らしを強いられていたのだ。ほとんど笑わないチヒロにイズルが店主の店でチャーハンを食べさせ、笑顔でチヒロが「美味しい」と言ったのと同じものをクミカにご馳走してくれる。クミカは「可愛いところがありますね」と店主に感謝する。みんながクミカのことを相談しているところに行き、クミカがチヒロに「よかったらまたご飯…行ってもらえますか」と誘い、2人の仲は進行する。
夏の終わり、仕事が終わりチヒロたちが帰ろうとすると、クミカがチヒロのシャツの端を掴んで「あの…もう帰っちゃいますか…?」と引き留める。飲みに行くことになるが、みんなは花見でのことがあり、警戒する。飲み屋で飲みやすいものをということで日本酒を出してくれ、飲んでみると、花見の時とは違い気持ちよくなる。深い深いところにゆっくりとゆっくりと沈んでゆくような感覚を味わい、静かに酔っ払う。店からの帰り、チヒロがクミカを送って行くことになった。夏の終わりの話になりチヒロが「きっとクミカさんには…きっと新しい季節が待っていると思うんだ」とカッコつけてつまづき、酔っ払ったと思ったクミカはチヒロの手を引き歩き出す。後で手を使いだことを追憶してクミカは赤面する。明らかにチヒロを気にしているのであった。

クミカの恋のゆくえ

クミカは秋にお月見や山登りを楽しみ、旬の味覚を味わう。チヒロとは山登りで疲れたクミカと休んでいる時にクミカが「休んだら…また登れますよね」といい雰囲気になったりするものの、それ以上発展はしなかった。もう食事をするようになってから1年以上が経ち、いろんな味覚や人間関係を知った。
冬が来て、クミカの誕生日が近づいてきた。クミカ以外のみんなとも相談になり、チヒロがクミカにサプライズでバースデープレゼントするよう促される。洒落たお店でクミカとチヒロは食事するが、最後に店が間違って結婚指輪をサプライズで出してしまう。チヒロは慌てふためき、「何かの間違い」と否定すると、クミカの目から涙が流れてくる。そしてクミカは「帰ります」と言って帰ってしまった。
次の日チヒロがクミカと外で会って「始めは…好きな人とご飯を食べたいって僕のワガママだったんだ…!」と勢いで謝ってしまい、ついには「ずっと…好きでした」と告白する。クミカは衝撃を受け、言葉を失う。「すぐには答えることができない」とクミカは言い、返事は後でいいからとその場はそれで終わる。どうしようかとクミカが考えている間に、チヒロがトラックに撥ねられる。大事には至らなく、クミカはお見舞いに行く。「なんでそんなに情けないんですか」や「やることなすことは裏目ばっかり」と不満を述べ、とことん間の悪い人ですねと詰め寄る。まだ「好きだって伝えてないです」、「チヒロさん私も好きですよ」と想いをはっきりと伝える。クミカがご飯をつくってあげることになり、一番最初に食べ、クミカが一番大好きな鍋焼きうどんを出す。事故で手を怪我したチヒロに触手で食べさせてあげ、自分も一緒に食べる。和む両人。2人は晴れて恋人になったのであった。

『クミカのミカク』の登場人物・キャラクター

主人公

クミカ

本名クミカ・ハリティ。クミカは、空気中の微生物を栄養とするので食べることを必要としない異星人で、地球に来て2年目。24、5歳くらい。好きな食べ物は鍋焼きうどんだが、普段はハンバーグをよく食べる。彼女は、デザイン事務所で働くまじめで不器用な女の子である。ある日、先輩のチヒロに誘われて初めて地球の食べ物を口にすると、それがきっかけで様々な感覚と新しい感情に目覚めていく。クミカは食べ物の味や香り・温もりや冷たさ、食べる人の表情や感想など食事にまつわるさまざまなことに興味を持ち、学び楽しむ。彼女は、チヒロや同僚たちとの交流を深めていく。クミカは、地球での“はじめて”を味わうクーデレ異星人である。

出流原デザイン事務所の面々

チヒロ

本名笠木千尋。チヒロは、クミカのことを密かに思う、デザイン事務所の先輩。彼はクミカが食べることに興味を持ち始めたときに、彼女に色々な食べ物を勧めたり、一緒に食事に行く。チヒロは、彼女の不思議な魅力に惹かれている。彼はクミカに優しく接し、時にはからかったり、時には励ましたりする。クミカにはしないが怒ると怖い。チヒロは、クミカに対して恋愛感情を抱いているが、なかなか告白できないでいる。チヒロは、クミカの食事のパートナーであり、恋の相手である。

イズル

本名・出流原宗一郎。イズルは出流原デザイン事務所の社長で、チヒロとは学生時代からの友人であり、クミカの上司でもある。イズルは、仕事に対して真面目で厳しいが、プライベートでは気さくで面倒見のいい性格。彼は、クミカの才能や努力を認めている。イズルは、家族や親戚から結婚をせかされているが、本人はあまり乗り気ではない。彼は、クミカに対して特別な感情は持っていないが、チヒロとクミカの関係には気づいている。だし巻きに目がない。

ミムラ

クミカの事務所の後輩。ミムラは、マイペースな性格で、仕事はあまり得意ではない。梅雨の時期は髪がくせっ毛になる。彼女は、クミカの食べ物に対する反応に興味を持っている。

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