天使1/2方程式(日高万里)のネタバレ解説・考察まとめ

『天使1/2方程式』とは、日高万里による少女漫画。2010年から『花とゆめ』で連載が開始され、2018年から同社の『マンガPark』に移籍した。秋吉家シリーズの『世界でいちばん大嫌い』の子供たちの世代が描かれる次世代編。荒れやすい唇にコンプレックスを持っている高垣ゆい子と美容師家系育ちで美貌の持ち主である杉本真那とで織りなされる恋愛物語である。リアルな美容関係の豆知識や初々しい2人の恋愛模様を楽しむことができる作品だ。

『天使1/2方程式』の概要

『天使1/2方程式』とは、日高万里による少女漫画。2010年から『花とゆめ』で連載が開始され、2018年から同社の『マンガPark』に移籍した。
度々作者の体調不良を理由に休載がされがちであった本作だが、2016年からは作者の腱鞘炎の悪化を理由に2年以上もの長期間休載をした後での移籍となった。
「秋吉家シリーズ」とは女3人男3人の6人兄弟+両親で構成される秋吉家の誰かが主要人物となる作者の作品の通称であり、他に単発作品が9作品と長期作品が1作品存在する。
『天使1/2方程式』は、作者の代表作ともいえる秋吉家シリーズの長期作品である『世界でいちばん大嫌い』の主人公の子供たちが主役となっている。そのため過去作の主要人物たちの登場も多く、秋吉家シリーズのファンからは歓喜の声が上がっている。
本作の主人公は料理が得意な普通の女子高校生である高垣ゆい子(たかがきゆいこ)。荒れやすい唇にコンプレックスを持っている彼女が、ひょんなことから高校の有名人である美容師家系育ちの杉本真那(すぎもとまな)に美容関係のアドバイスを受けることになったところから物語が始まる。
ゆい子の後輩である真那は、フランス人の血が入っていることもあってか銀髪碧眼でありこの世のものとは思えない美貌の持ち主である。それに惹かれた1年の女子生徒たちから「マナ様」と呼ばれて自分の意思に反して崇め奉られている存在だ。
放課後に美容レッスンをうけるゆい子はそのお礼として真那に手作りのお弁当を渡すようになり、それが絶品であったため真那はすぐに彼女に懐いてしまった。
そのことに嫉妬した1年女子たちからゆい子は嫌がらせを受けるが、持ち前のパワフルさと周囲の友人たちのおかげで乗り切ることになる。そしてこれがきっかけでゆい子と真那は互いの気持ちを確かめることに繋がるのであった。

『天使1/2方程式』のあらすじ・ストーリー

2人の関係性の始まり

ゆい子(左)の唇を気にする真那(右)

唇の荒れやくせ毛にコンプレックスをもつ高校2年生の高垣ゆい子(たかがきゆいこ)は幼いころ、いつもカサカサでたまにひび割れて血がにじんでしまう唇のせいでクラスの男の子に馬鹿にされたことがトラウマになっていた。
その日も唇のカサついた皮をはがしてたせいで血がにじんでしまっていたゆい子は、友人たちと廊下を歩いている際にぼーっとしていたため1年女子からマナ様と呼ばれる高校内で有名な杉本真那(すぎもとまな)にぶつかってしまう。
ぶつかった拍子に白シャツに唇の血がついてしまったことに慌てたゆい子は「脱いで!」と追いはぎのようにシャツを脱がすと水場に直行し、追いかけてきた真那に荒れた唇を見られたことに動揺して大騒ぎをしたまま走り去ってしまった。
今まで周りにいた自分のご機嫌伺いをしてくる女の子たちと違うマイペースなゆい子に興味津々な真那は、翌日に洗って綺麗にしたシャツをもって訪れたゆい子に突然唇のケアを申し出るのだった。
こうして開催された放課後のリップケア講座だったが、マイペース気味で天然っぽい言動が面白く感情がすぐに表情にでてしまうゆい子に真那は徐々に惹かれていくのだった。

2人が結ばれるまでの出来事

放課後のリップケアのお礼としてゆい子は真那の分のお弁当も作ることになった。普段から母の手伝いで料理をしているゆい子のお弁当やお菓子は絶品で、彼女の密かな特技だったのだ。
互いに少しずつ惹かれあっていき両片思いの状態の2人ではあったが、真那からの突然のキスとその後の普段と変わらない様子にゆい子は大混乱を起こす。
普段から真那は1/8フランス人の血が入っているせいでスキンシップが激しかったためどういう意味でのキスなのか分からなかったゆい子は、学校の試験や真那のファンからの嫌がらせも相まって少し距離を置くことになってしまう。
嫌がらせの一環としてゆい子の自転車からペダルが盗まれるという珍事件が起こるが、これについては自転車が使えない不便さを除いて実害がなく、むしろ「何故ペダルなのか」と爆笑をするゆい子であった。
消えたペダルについてはゆい子が唯一普通に話せる男友達である上野貴士(うえのたかし)とその水泳部仲間たちがともに捜索してくれることになったが、それが原因で新たな嫌がらせとしてゆい子と上野が付き合っているのだという噂を流されてしまうのだった。
ゆい子の女友達である滝川類(たきがわるい)とその彼氏である水泳部仲間の内の1人三井竜也(みついたつや)の尽力もあってペダルは無事に見つかり、ゆい子は友人たちのおかげで噂を流した人物の特定もできた。
そしてゆい子は元凶であったマナ様ファンの相原絵里花(あいはらえりか)を屋上に呼び出して直接対峙し、「こういったことは相原自身のためにもよくないし、真那の気持ちも無視している」と自身の想いをぶつけるのだった。
その後噂の元凶がいつも自分に侍っていた人間でありゆい子についてありもしない嘘を囁かれていたことを知った真那は「ゆい子さんから直接聞いたことしか信じない」と相原を拒絶し、今までの陰湿なやり口も相まって今度は相原が孤立することになってしまうのだった。
苦節を経てゆい子は持ち前のパワフルさと友人たちのおかげで後ろ向きであったことを反省して、真那へ想いを伝えることを決意する。そして友人や家族からの叱責でゆい子への言葉が足りていなかったことを反省した真那からの告白を受けて、晴れて両想いの恋人となる。

デート問題勃発

ゆい子は携帯電話の所持が許されていないだけでなく門限が存在していたり服は従姉妹のおさがりであったりと、今時珍しいほど古風で厳しい家で育てられた。
そのためゆい子はデートに着ていく服というものを持っておらず、真那からのデートの誘いを反射的に断ってしまうのだった。
落ち込む真那の様子からゆい子に探りを入れた真那の姉である杉本ひな(すぎもとひな)と幼馴染の本庄みちる(ほんじょうみちる)は、ゆい子とデート服の買い物に出かける約束を取り付けることに成功するが、それを知った真那は幼馴染の黒峰夏艶(くろみねなつや)を伴ってそのお出かけを尾行する奇行にでる。
最終的にはお店で下見をした後にひなたちの知り合いであり服の処分に困っていた広瀬夏奈(ひろせかな)の元を訪れ、身長や体形がほとんど同じ夏奈からほぼ新品のセンスの良い服を大量にもらい受けることになる。
尾行していた一行も合流し、再度デートに誘う真那にゆい子は今度は了承の返事を返し、2人の初めてのデートが決定するのだった。
初デートにごきげんな真那と緊張しながらもデートを楽しむゆい子たちであったが、途中立ち寄ったドーナツ屋で真那が電話離席中にゆい子の過去のトラウマの原因である男の子たちと遭遇してしまう。
ゆい子は「自分に今も気があるのか」とありもしない事実で勝手に話を盛り上げる男たちに珍しく声を荒げて否定した。その様子に気づき、離席から戻った真那が割って入ったことで気を悪くした男たちとひと悶着がおきそうになる。
しかし真那がきっぱりとゆい子の彼氏であると宣言したことで、驚く男たちの隙をついてその場を去ることができた。はっきりと彼氏発言をされたのは初めてだったゆい子は、改めて恋人になったのだと実感して2人は想いを確かめ合うのだった。
くせ毛を気にしているゆい子のために家の美容室でシャンプーとブローをさせてほしいとデート中に約束を取り付けていた真那は、デートから数日後に訪れたゆい子を歓迎するがその場には真那のヘアメイクの師匠であり美容室の従業員である三上謡司(みかみようじ)の姿もあった。
三上は真那曰く「肌トラベルフェチ」であり唇の荒れに悩むゆい子は好みど真ん中なので、真那としてはできるだけ関わらせたくないと思っているが、ゆい子の悩みを解決するためには肌トラブルに非常に詳しく肌に優しい化粧品を手作りできてしまう三上の助力が必要である。
ブローやストレートアイロンなどは2人がかりの方が早く済むため、この後にゆい子の唇でも荒れない三上お手製のリップやグロスなどを試す時間が欲しかった真那は泣く泣く三上の手出しを了承したのだった。
そうして三上の手助けもあり、初めて唇が荒れない色付きリップを手に入れたゆい子は自分が前向きに自信をもてるようになったことを喜ぶのであった。

相原絵里花との関係

真那たちのおかげで自分に自信が持てるようになってきたゆい子は、ある日クラスの女の子が久しぶりの彼氏とのデート前なのに唇の荒れと湿気による髪のクセを気にして落ち込んでいる場に遭遇する。
真那からのアドバイスやヘアアレンジでその悩みを解決したゆい子は、自分が真那に悩みを解決してもらったように自分も誰かの悩みを解決できるようになれたらと、将来の夢について考えるきっかけを得るのだった。
そしてゆい子は、嘘を吹聴して陰湿な嫌がらせをしていた相原が真那とゆい子が恋人になったのを機に校内で孤立していることを知る。
直接気持ちをぶつけたことで相原との問題は自分の中で終わっていると思っていたゆい子は、自分に直接言ってくることさえしなかったその他大勢の掌返しに激怒し、持ち前の猪突猛進さで相原に直撃しお昼ご飯を一緒に食べようと誘い始めるが、当然のように相原はそれを拒絶して逃げ回るのだった。
結局真那の協力を得て相原を捕まえることに成功したゆい子は、クラスで浮いているせいで勉強が遅れ気味になっていた相原を試験勉強会に誘う。成績を優先した相原はそれを了承し、真那とともにゆい子に勉強を見てもらうことになるのだった。
そしてその過程で相原は、マイペースでぽわぽわしているように見えてその実脳筋気質でまっすぐなゆい子に段々と絆されていくことになる。

ゆい子の初バイトと携帯電話

みちるの母方の喫茶店のお手伝いさんが急遽休みとなったために、ゆい子は代打として冬休みの間に初バイトをすることになった。
ゆい子と付き合う前に家の美容室での見習い仕事を優先的に入れるようにお願いしていた真那は、イベント事の日が空いていないことの申し訳なさと自分以外はゆい子のバイト先にお邪魔していることに嫉妬してしまう。
そのせいで少しぎくしゃくしてしまう2人だったが互いの考えをしっかりと話し合うことで長引くことはなく、ゆい子のバイト終わりにそのまま喫茶店でのデートを楽しむ余裕を持てるようになった。
ゆい子がバイトに勤しむ中、みちるの弟であり中学卒業と同時に上京して美容師として働いている見た目美少女のくーちゃんこと本庄匠(ほんじょうたくみ )が突然の帰省をはたす。
真那とは幼馴染であるくーちゃんは、昔自分のことをアクセサリー感覚で扱われて「アクセサリーに恋する趣味ないの」とひどい振られ方をしたことがトラウマになっている真那に彼女ができたことを驚きつつも、ゆい子の内面を知り真那との仲を祝福するのだった。
真那と順調に仲を進展させていくゆい子は携帯電話がないことの不便さをひしひしと感じていたが、兄の尽力の元携帯電話を持つことが許されて初の携帯電話を手にすることになる。

2度目のデートとバレンタイン

ゆい子と真那は2度目のデートとしてデパートのコスメエリアに訪れるが、きらきらした売り場にゆい子は怖気づいてしまう。しかし、真那のフォローもあって少しずつ落ち着いてデートを楽しむことができるようになっていた。
ゆい子が途中で遭遇した相原との会話を楽しむあまり真那のテンションが駄々下がりしてしまう失敗もあったが、この後に控えるバレンタインで特別なすごいものを用意する約束をして機嫌を直すことに成功する。
後日真那の家でバレンタインのお菓子を披露するゆい子だが、テリーヌショコラやオランジェットに始まり様々な焼き菓子の詰め合わせまで用意されておりかなり手の込んだ内容になっていた。
外でのデートよりもお家でのデートの方がゆい子が落ち着けることに気づいていた真那は、途中でお菓子に釣られてやってきたひなのこともゆい子の安心材料として受け入れ3人で豪華なバレンタインを楽しむのだった。

『天使1/2方程式』の登場人物・キャラクター

主要人物

高垣ゆい子(たかがきゆいこ)

高校2年生の主人公で、唇の荒れやくせ毛がコンプレックスの普通の小柄な女の子。
昔から母の手伝いで料理をしていたためかなり料理上手であり、ご飯だけでなくお菓子作りもお手の物である。
不注意で真那の白シャツを汚してしまったことをきっかけに始まったリップケアの講座を通して仲を深め、嫌がらせなどを乗り越えて真那と恋人になった。
マイペースでぽわぽわしているように見えてかなり猪突猛進な一面もあり、真那曰く「ギアが入ったゆい子さんを止められる人間はいない」とのこと。
ボケる時もあれば突っ込みに回ることもありかなりノリが良く、独特な感性をしている部分があるため一部の人間からは面白い人や変人のレッテルを張られている。

杉本真那(すぎもとまな)

ゆい子の後輩の高校1年生の男の子で、1/8フランス人の血が入っているため銀髪碧眼の美貌を持つ。
美容師家系で自身もその道を志しており、普段から家の美容室での手伝いと勉強をしている。
昔好きだった女の子にひどい振られ方をされたことがトラウマになっているが、ゆい子の言動はその女の子と真逆でありそのことにひどく救われている場面が多々ある。
『世界でいちばん大嫌い』の主人公である秋吉万葉(あきよし かずは)と杉本真紀(すぎもと まき)の子供。
髪や瞳などは父寄りだが顔立ちは母に似ており性格の9割も母親譲りのためサバサバとしたナチュラルな男前である。

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