二月の勝者-絶対合格の教室-(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『二月の勝者ー絶対合格の教室』とは、高瀬志帆が『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて連載した中学受験を題材とした漫画、及びテレビドラマである。中学受験塾での人間ドラマを描いた作品であり、東京・吉祥寺の中学受験塾桜花ゼミナール吉祥寺校を舞台に小学生達の成長を描く。2021年10月から12月に日本テレビで柳楽優弥主演のドラマ版が放送された。
2022年第67回小学館漫画賞一般向け部門を受賞し、漫画の累計部数は320万部を突破している。

『二月の勝者-絶対合格の教室-』の概要

『二月の勝者ー絶対合格の教室』とは2018年より高瀬志帆が『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて連載している漫画及びテレビドラマである。2018年にNHK『おはよう日本』で紹介されると大きな反響を呼んだ。2022年第67回小学館漫画賞一般向け部門を受賞し、漫画の累計部数は320万部を突破している。
2021年10月から12月に日本テレビで柳楽優弥主演のドラマ版が放送された。
新米塾講師である佐倉は桜花ゼミナール吉祥寺校で働くこととなる。そこに新校長として黒木が現れた。黒木はトップ校の合格者の約6割を誇る他塾フェニックスの元人気講師だったが、御三家合格者0の桜花ゼミナール吉祥寺校を立て直すために来たという。生徒への初めてのあいさつで「君達全員を第一志望に合格させるためにやって来た」と宣言し驚かせる。生徒のことを「金脈」生徒の親を「スポンサー」と表現するなど冷徹な一面をもつ一方、家庭内に問題のある生徒のために自ら動くような優しい一面も持っている。
本作は佐倉を通して中学受験の現状、中学受験塾とはどんなことをするのか、受験生の家庭内の問題など中学受験にまつわる様々なストーリーが展開されていく。

『二月の勝者-絶対合格の教室-』のあらすじ・ストーリー

2月 最強最悪の塾講師黒木蔵人との出会い

中学受験塾「桜花ゼミナール」吉祥寺校に新卒で就職した研修中の佐倉麻衣(さくら まい)は、塾で質問をしてきた木下が志望校に全敗中と知ると気がかりで受験日当日の応援に行きたいと申し出た。そして当日朝早く校門前に到着したのだが、そこにはすでにフェニックスの塾講師黒木蔵人(くろき くろうど)がいた。佐倉は黒木に話しかけるも無視されてしまう。後に木下が到着するのだが、わからない理科の問題があり、佐倉に質問するのだが、算数の講師である佐倉は答えることができなかった。すると、隣にいた黒木が他塾の講師にも関わらず解き方をすぐに教え、木下からとても感謝されていた。それを見た佐倉は塾講師としての自分の無力さを思い知らされた。

正式に講師となった佐倉が塾に出社すると、桂(国語担当の女性講師)から合格実績が悪かったため校長は飛ばされたと聞いた。代わりに来た新校長は2月に受験会場で会い、話しかけても無視されたフェニックスの講師黒木だった。
黒木は「君達全員を第一志望校に合格させるためにやって来た、黒木蔵人です。」と生徒たちに初めての挨拶で伝えた。生徒の島津順(しまづ じゅん)が「全員受かるワケないですよね?」と黒木に質問したが黒木は論理的に言いくるめた。テストが終わると講師達が採点作業をするのだが、答案を埋められていない子の多さに佐倉は驚く。学校のテストで100点を取れる子でもオープンテストでは20点取れるかどうかなのである。
佐倉は黒木に生徒への挨拶で受かる確率の話をしたことに「全員必ず合格させよう」という強い意気込みを感じたことを伝えると、黒木は親を「スポンサー」新規塾生を「金脈」と表現し、「この時期の新規塾生は、『金脈』です。絶対に獲得しましょう。」と佐倉に言った。この言葉を聞いた佐倉はなぜこの言葉を選んだのかと思ったが、経験も実力もないため何も言い返すことが出来なかった。

桜花ゼミナールのクラスはΩ(オメガ)、A 、Rクラスと3つのクラスに分かれている。Ωクラスが一番成績の良いクラスであり、席も成績順に並んでいる。Rクラスの算数担当になった佐倉は中学受験をするような子たちだからモチベーションが高く精鋭のような生徒ばかりで責任も重いのではないかと感じていたが、実際は漫画を読んでいる子やぼーっとする子がいるなど緊張感のない様子がみられた。黒木からも上位校の見込みがない生徒にはお金をコンスタントに入れる「お客さん」として扱い「楽しくお勉強」してくれればいいと思われていた。

3月 桜花吉祥寺校女子トップ前田花恋の悩み

黒木から「Rという『お客さん』に一生懸命になるな」と言われた佐倉だが、Rクラスをなんとか良くしたいと考えた。生徒の加藤匠(かとう たくみ)がぼーっとしていて成績も良くないことが気になり、こまめに声をかけるようにしていたのだが、突然塾に行きたがらなくなってしまった。その理由は他のクラスの生徒から先生にひいきされていると思われ、「落ちこぼれ」と言われたからだった。Rクラスの授業を外されてしまった佐倉は匠の机の落書きを見つける。その落書きが電車の時刻表だったことで、匠が鉄道好きだと知る。匠の母親から塾を辞めたいと電話があり、佐倉も好きなことをする時間を削ってまで無理に受験勉強をする必要はないのではと黒木に伝えたが、「他に好きなことがある子ほど、受験をやめなくていいんですよ。」と返された。塾を辞めると言いに来た匠と母親に黒木は「鉄研」のある中学校のパンフレットを見せる。すると匠はどんな学校なのか興味をもつようになり、「鉄研」のある学校に通いたいという目標を立て、もう一度中学受験を頑張ってみることに決めたのだった。

佐倉が塾の入退出記録を確認すると、Ωクラスの前田花恋が10日もきていないことに気づいた。桂に相談すると、転塾かもしれないと言うのだ。現状に満足していない家庭は新年度が始まるこの時期に転塾を考えるそうだ。フェニックスに転塾した花恋は、授業スピードの速さに驚く。しかし、ここでもトップを獲りたいと今まで以上に頑張るのだった。花恋の母親が深夜に帰宅すると花恋は遅れを取り戻すためにまだ勉強中だった。ストレスからか髪の毛を引き抜くようになってしまった。貧血でフラフラの花恋は夜の街に入り込み、一人で街を歩いていると男の人から声を掛けられた。花恋は警戒するが、私服の黒木だった。黒木に「花恋は女王になれるところでしか輝けない。」と言われ、桜花ゼミナールに戻った。

5月 佐倉の地元での出来事

佐倉は仕事の休みをとり、山梨に住んでいる祖母に会いに行く。すると、以前よりも受験塾が増えていることに気づく。祖母の家に着くと、祖母の教え子が遊びに来ていた。祖母は過去に小学校の先生をしており、よく教え子が遊びに来るそうだ。麻衣も同じように小学校の先生になったと聞いており、とても喜んでいた。だから、塾の講師であることを言えなかった。

翌日いとこ達と県立科学館にいくのだが、そこでなんとフェニックスの講師灰谷に出会う。灰谷は宇宙マニアで休みの日に地方の宇宙関連施設に行くのが趣味だった。灰谷は宇宙飛行士になるのが夢だったようだ。2人で館内を歩いていると、黒木の話になり、灰谷から「あの人は、平気で子どもを裏切る人間です。」と聞かされた。佐倉は以前黒木に子どもの志望する学校と親の志望する学校が異なっているとき、どちらの意見を第一に考えたらいいのか聞いていた。その答えは「子どもは裏切ります。言うことを真に受けてはいけません。」だった。灰谷も黒木と同じで「子どもの夢を中学受験で指針にするなんて論外ですよ。」と言う。理由は子どもの話しはころころ変わるし、偏差値の高い学校を目指せば、職業選択の幅が広がるからである。灰谷は佐倉に困ったことがあれば相談してと言い、名刺を渡し去っていった。

7月 桜花吉祥寺校トップ島津順の家庭問題

夏期講習が始まった。子どもたちは1日7時間も塾の中で過ごす。そんな中、Aクラスの上杉とΩクラスの島津がケンカをしていた。理由は島津が上杉に「偏差値60以下の学校なんて学校じゃない」「そんなとこ目指してる奴らなんてまじゴミ」と言いバカにしたからだ。また別の日にも島津が上杉をバカにしていたところを、黒木が見つけ、上杉に島津と揉め事を起こさないよう忠告するのだった。

島津家では父親が偏差値50の学校の入試の過去問を順にやらせていた。結果は3分の1もできなかったため、父親は母親のせいだと言い、問題集を投げつけ怒った。順が上杉をバカにしていたのは、父親の影響から受けたものだった。翌日、島津は全ての授業に無断で欠席した。講師が島津を探すが、なかなか見つからない。そこに、上杉から島津の居る場所に心当たりがあると教えてくれた。上杉のおかげで島津を本屋で発見したものの、見つかると逃げ出してしまい、佐倉が公園まで追いかけたが見失ってしまった。そこに島津のことが気になっていた上杉から再び島津の居そうな場所を教わると、公園のフェンスの先でからっぽの犬小屋の陰に島津を見つけるもののひどく動揺した様子だった。母親が「嫌なら…やめていいよ?中学受験。」と言うのだが、島津は「嫌だやめない!やめたらママがパパにいじめられる!!!」と泣いてしまうのだった。その日の夜、塾をさぼったことを父親に知られると、偏差値の低い学校を「ゴミだろゴミ!!」と言い、「順をゴミ溜めに行かせることになってもいいのか!?」と母親に言う。母親が「もし順が、そういう学校しか受からなかったとしたら…順は人間以下だって言うんですか…?」「たとえ順が…どこにも受からなかったとしても、順は順です…!」と言い返した。母親からのその言葉に順は涙を流すのだった。

桜花ゼミナールでは受験生のモチベーションを上げるため、去年と今年の元桜花生数名を招いた。佐倉はAクラスの柴田まるみにも先輩から話を聞くチャンスだと声をかけた。柴田は大人しく引っ込み思案な性格のため学校は不登校だった。柴田の母親は娘に合った不登校に理解のありそうな偏差値40ぐらいの学校を希望していた。また、柴田の姉の高校受験の経験から内申点重視の高校受験は回避したいと思い、中学受験を希望しているのだった。黒木もまた「先生に好かれる生徒」が有利な高校受験よりも「『本番のテストで点数をクリアさえすれば合格できる』中学受験が大好きです。」と言った。元桜花生達から話を聞く中で柴田は女子御三家の一つである個性を尊重する女子学院を目指したいと思い、黒木に相談するのだった。

橘は知人から黒木が金と女に汚いという噂を聞いていた。月木土に風俗街でうろうろしているようだ。ちょうど木曜の夜、佐倉が塾から帰る途中、風俗街にいる黒木を見つける。そこで働く女性と話をしている黒木だったが、突然男が殴りかかりガラスにぶつかった黒木は顔から血を流していた。一部始終見ていた佐倉は男が黒木にさらに殴りかかろうとしたときに庇いに入ると、男は逃げた。手当のために近くの怪しいビルの事務所に入ろうとすると、中には子供たちがいる様子だった。黒木は佐倉に詮索するなと言い、追い出した。佐倉は帰るときに若者に黒木はここで何をしているのか尋ねたのだが、「ここで星を拾っては投げているんです。」とよく分からない返事をされただけだった。

8月 夏期合宿

いよいよ夏期合宿が始まった。初日にクラス分けの発表がされて、Aクラスの上杉海斗と柴田まるみがΩ入りしたのだった。他の子と差がついた理由は柴田は受験が自分事になり、自律的になったこと、上杉はΩクラスの島津と競い合うことと、自己評価をリセットさせることができたからである。合宿期間中、柴田と直江が同じクラスになり仲良くなる。しかし、偏差値60の直江が柴田の志望校と同じ女子学院志望で合格判定が50%もいかないと知ると、柴田は合宿帰りの車の中で、「自分なんかが受かるわけない」と泣いてしまうのだった。

9月 合格判定模試後の生徒達

合格判定模試が始まった。Rクラスの子どもたちは手応えのある様子だったが、軒並み偏差値を下げるのだった。黒木によると夏以降は全体の学力が上がるので、偏差値は良くて横ばい、下がるのも普通のことだという。親が不安に思うのもこの時期だそうで、心配になり塾に電話をかけてくる親も多い。黒木は事前に「夏の成果は9月には出ません」と親に伝え、心構えしてもらうことで、親への不安を最小限に留めた。

Ωクラスの島津の家では父親が模試の偏差値が下がったことで、塾のやり方が悪いと決めつけ、ネットでおすすめされていた問題集をやらせるようにし始めた。塾の宿題にプラスしてさらに問題集が増えたことで、島津は寝不足になる。父親が塾にお弁当を届けに行くと、島津が休み時間に友達とたわいもない話で盛り上がり大笑いしているところを目撃される。さらに帰りのエレベーターで上杉の母親から島津が上杉に勉強を教えていることを聞くと、家で「バカの相手してんじゃないよ!」と島津に大激怒。島津は友達のことをバカにされたため、親に反発し喧嘩になってしまう。

Ωクラスでは席替えで同じ女子学院を志望する柴田と直江が隣同士になったことでさらに仲良くなり、直江の家で一緒に勉強したり、お互いに切磋琢磨し勉強を頑張るのだった。

10月 島津家の大騒動

志望校別にクラスが分かれるようになり、島津は御茶ノ水校で授業を受けるようになった。授業から家に帰ると、父親が開成の過去問を解くよう言った。なかなか問題を解けないことにイライラした父親は母親が甘いからだと母親を突き飛ばしてしまう。それを見ていた島津は母親を守るため父親を突き飛ばした。黒木が島津の家に電話をすると悲鳴と大きな音が聞こえてきた。黒木と佐倉が急いで島津の家に向かうと、家の前にはパトカーが止まっており、警察官が出てきた。家にいたのは父親だけで、その父親が警察に息子が暴力をふるったと通報したのであった。母親は塾に行き、夫から島津を引き離したく、離婚の可能性もあり経済的に受験も私立進学も続けられないから中学受験をやめると伝えた。黒木は母親に奨学金制度のある学校や国公立の中学を勧めた。後日、島津が塾に行くと黒木に経済的に中学受験をやめようと思っていること、開成中学の受験にチャレンジしたかったことを伝えた。そこで、黒木は開成中学にも奨学金制度があることを親子に話し、再び開成中学への受験を目指すことになった。

桂が佐倉に島津家の件について家庭への介入は良くなかったと話していると、二人の話を聞いていた黒木は佐倉と桂にフェニックス時代に生徒を潰した話をするのだった。かつて、サミット1の下位の男の子がサミット2に落ちてしまった。彼の腕に複数の痣があることに気づき虐待されているとわかると個人的に会って教え、母親に個人指導がバレると正式に家庭教師を頼まれ、最終的には志望校へ合格させてしまった。だが、実力以上の学校に入ったことで、男の子は授業についていけなくなり不登校になってしまった。母親から「『理想の息子』になれないなら出てって!」と言われると、バットで家の中をめちゃくちゃにするのだった。黒木が生徒の家庭に介入しすぎて家庭崩壊をおこしてしまったのだ。その後少年は祖母の家で生活しているが、新しい学校にも馴染めず、中三になった今も家に閉じこもったままである。さらに、黒木は自身の弱点は「『想像力』と『共感力』の無さ」だと話した。想像力が足りないから子どもの数だけ違う成長があるのに、今までのノウハウしか教えられないし、共感力が足りないから生徒が本当に困っていても寄りそえない。この仕事の本質を知るための一つとして桜花に来たと明かしたのだった。

11月 保護者のクライシス

6年生の保護者会で黒木は保護者のメンタルに3回のクライシスが来ると話した。第一のクライシスは12月の模試の直前、第二のクライシスは1月、第三のクライシスは2月である。その中で危険度が最も高いのは12月の模試の直前だと言う。12月の模試の直前とは、11月の模試の結果が思うように出なくても、あと一回模試が残っている時期のため、まだ挽回できるかもしれないという焦りから、カレンダーの残日数ばかりが気になって、空回りしてしまう時期である。親と子でケンカになるのを避けるため黒木は保護者にいつもニコニコ明るい親を演じるよう伝えた。小学生の受験は親とのケンカ一つでパフォーマンスが激しく落ちるからである。また11月からは願書を入手し、願書用の証明写真を撮りに行き、健康管理を徹底するなど親としてのタスクが増える。ケンカをするエネルギーは全てマネジメントに充てるよう黒木は保護者にお願いした。

11月上旬、上杉海斗が塾の自習室に行く途中、偶然フェニックス模試の帰りの島津順に会った。二人は井の頭公園の先の弁天さんに神頼みをしに行った。島津は上杉に家庭環境が変わったのに中学受験を続けていいのかという悩みや、模試の手応えがなかったことなど不安な気持ちを打ち明ける。上杉もまた本当は開成にチャレンジしたいことを大声でお願いし、二人で開成合格を願うのだった。

12月 黒木から保護者への宿題

最後の模試も終わり、その結果をもとに試験までどのように過ごすか、最後の保護者会が開かれた。黒木から保護者へ入試当日までの「宿題」が出された。それは、子どもたちを受験会場に送り出す、その時の「一言」を考えておく、というものだった。自分の子どもの努力にふさわしい声掛けができるはずだと。

最後の模試、上杉海斗は、開成中学を受験する条件である合格判定40%をとることができなかった。しかし、母親は開成中の「生徒募集要項」を渡し、出願準備をしておくと言った。上杉が努力してきたことがわかり、「信じる」という気持ちを思いだしたのだ。

1月 前受校の受験開始

前受校の受験がはじまる。

島津順は東海地区私立トップ校である「海王中」を受験する。偏差値は70と非常に高いが、学費だけでなく寮費まで奨学金がでる「特別給付性枠」があるためだ。島津は合格し、吉祥寺校の今年一番最初の「一般合格」となった。母親は、島津が自分で学校を調べ受験することを決めたことに、頼もしさ誇らしさを感じつつ、子育ての終わりを感じていた。

前田花恋は、「新宿学園海浜中」を受験するが、不合格となってしまう。泣き崩れるが、なんとか持ち直し、「転んでも立ち上がる」力で2月の桜蔭受験に臨む。

2月 2月の勝者

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