隣の席の、五十嵐くん。

隣の席の、五十嵐くん。のレビュー・評価・感想

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隣の席の、五十嵐くん。
8

学生時代の恋心を思い出しませんか?

地味子とイケメンという王道の恋愛模様をゆるやかに描く、学園ラブストーリー。ひなたによって「エブリスタ」で公開された小説が人気を博し、瞳ちごによりコミカライズされた作品です。

クラスの隅でおとなしく過ごす今井椿は、新学期のクラス分けで水泳部のエース、五十嵐くんと隣の席になる。五十嵐くんは背の高いイケメンで、自分の意見をはっきりと述べることのできるスクールカースト上位。
片や椿は派手な人たちが苦手で、椿の席を占領している男子に対し「どいて」のひと言も言えないおとなしく弱気な子。2人はじゃんけんに負けて学級委員となるところから、接点が持てなかった2人に交流がうまれ、椿は五十嵐くんのもつ凛とした強さにどんどん惹かれていく。

序盤はよくある設定と思いつつも、椿が自分に自信が持てない様子が丁寧に描かれています。他人を気にする椿は「私のことなんて誰も気にも留めないよね」と考えつつも、気にしすぎる自分を変えたい気持ちを抱えています。
そんな中「他人なんてどうでもいい」といった感性の持ち主の五十嵐くんが現れて、価値観がどんどん変わっていきます。
それは五十嵐くんも一緒。始めは「隣の席の今井さん」だったのが、彼女のやさしさと穏やかさに段々惹かれていくのです。告白シーンは「え、やっぱり?」と思いつつも、「いつの間に!」と、つい読み返してしまうくらい。

付き合ってからはお互いの価値観や性格の違いからズレが生じるのですが、お互い真摯に向き合いそのずれを補正する姿には心がきゅっとなります。
学生時代のあの淡い恋心を思い出しながら読んでみると、あの頃の記憶が鮮明に思い出せるような作品です。