人馬(漫画)

人馬(漫画)のレビュー・評価・感想

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人馬(漫画)
10

圧倒的画力! 「人馬」 作:墨佳遼

山の神として崇められていた「人馬」。戦乱の世は神を獣へと貶め、ついには争いの道具にしてしまった。
人間によって行われる人馬狩りから逃れ、息を潜めながら生きていた山の人馬「松風」は、ある日人馬狩りに見つかり捕らえかけられた息子を逃がすため代わりに人に捕らわれてしまう。人馬達を調教する屋敷に連れて行かれ、矜持を奪われた哀れな同胞を目の当たりにした松風の激しい怒りは人間達へ、そして捕らえられた人馬達の中で唯一人間に迎合する小雲雀に向けられた。しかし小雲雀もまた、幼い頃に集落共々人馬狩りにあい、逃げ出さないため、脚を速くするために両腕を切り落とされながらも、生き抜くために苦渋の思いで人間に従いながら脱出の機会を伺っていたのだった。二頭は協力し、見事脱出を果たす。
松風は「生き別れになった息子は妹が住まう山にいるはず」と見当をつけ、合流するため山へ向かい、小雲雀も同行することに。旅の中で松風は、自然と共に生きること、その過酷さと美しさを教えていく。松風の優しさが、怒りや悲しみが、圧倒的な画力で繰り広げられて目が離せない。まるで水墨画のような作画は繊細でいて、強く激しい。時代に翻弄される人馬の美しくも悲しい生き様に対比して、人の弱さと強欲さが浮き上がり、考えさせられる作品。