社会になじむとは すばらしき世界をみて
映画「すばらしき世界」は、現代社会をありありと描きだした作品だ。
主人公は、殺人容疑の刑期を終えた元やくざだ。この主人公が、何十年もの時を経て、社会に復帰し、馴染んでこうと、もがく物語だ。主人公と、それを追いかける記者の姿には、現代社会に生きる私たちの他者への無関心さがよく表現されていた。社会に適合しようとする主人公の姿から訴えられる、社会に適合するとはどういうことなのか?というメッセージも伝わってきた。社会の中で置いていかれる人々、そして自分がその人々に関心を向けてきたか、理解しようと努めてきたか?主人公以外にも、外国人技能実習生や被災し風俗嬢になった女性など、日本社会での居場所に苦しむ人が物語の随所に登場し、物語として完結するのではなく、現実生活にまで影響を与える作品だった。
シリアスな気持ちになるとともに、生きることについて考えさせらる、感動作である。シリアスな映画であるが、主人公の姿やそれを支えてくれる人たちの姿から、勇気をもらえる作品であった。
この映画の製作エッセイ「スクリーンが待っている」も同時におすすめしたい。自分は映画観賞前に読んだが、映画を見ながらエッセイのシーンをつなぎ合わせることができた。