ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画』とは2019年に制作されたヒンディー語によるインドのヒューマンドラマ映画。監督はジャガン・シャクティ。インドで初めての火星ミッションに参加した、インド宇宙研究機関の科学者たちの実話がベースとなっている。女性ならではのアイデアと努力で火星探査機の打ち上げを成功させる姿が描かれる。主な出演者は、これまでに100本以上の映画に出演してきたボリウッド俳優のアクシャイ・クマール、『女神は二度微笑む』(2012年)の人気女優ヴィディヤー・バーラン。

『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画』の概要

『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画』とは2019年に制作されたヒンディー語によるインドのヒューマンドラマ映画。主演は、2018年『パッドマン5億人の女性を救った男』のアクシャイ・クマール。クマールは、これまでに100本以上の映画に出演しているボリウッドを代表する俳優。共演のヴィディヤー・バーランは、本作でフィルムフェア賞最優秀主演女優賞にノミネートされている。

インドの宇宙事業の命運をかけたともいえるロケットの打上げが失敗に終わってしまう。責任者のタラとラケーシュは、責任を取らされ誰もが実現不可能と考える火星ミッションに異動させられる。しかし、集められた人材は実績もない素人同然の寄せ集めで、絶望したままミッションはスタートし雲行きが怪しくなる。そんな中でもラケーシュは常に前向きに考え、タラをはじめチーム全員を支えていく。ラケーシュのチームへの心遣いは、理想の上司そのもの。予算も削られ、一時はチームが解散されるが、主婦でもあるタラが家庭料理のプーリーにヒントを得て、小さなロケットでも探査機を火星に送る方法を思いつく。ラケーシュと共に熱心にミッションの継続を願いでて、低予算ながらミッションの再始動が決定する。予算もなく、難題に挑む中で、バラバラだったチームが徐々にまとまり一致団結する。クッションに描かれていた船の帆にヒントを得たり、折り紙にヒントを得たりしたチームの苦労や離婚や妊娠など、様々な問題を抱えながらも明るく仕事に打ち込む女性の姿が生き生きと描かれている。女性の節約アイデアがミッションを成功させるカギとなる点でも、観ている人を勇気づける作品。

インドでは、公開初日に2億9160万ルピーもの収入を上げ、主演を務めたクマールの映画の中でも、初日収入の最高額を記録した作品。評論家からも、面白さと楽しさを兼ね備えた映画だと好意的な評価を受け、世界で29億590万ルピーの収入を上げ大ヒットした。サブタイトルの「崖っぷちチームの火星打上げ計画」は、日本の公開に際して付けられた。

『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画』のあらすじ・ストーリー

ロケットの打ち上げに携わるタラ

2010年インド・ベンガルールの自宅で、タラが朝食の準備を忙しそうにしている。夫のスニルに仕事で遅くなることを伝えると、「ダメだ」と一喝されてしまうタラ。スニルは娘のアニャにも、毎晩、遅くまで電話をしていることを注意し、タラに娘をしっかりみているようにと厳しい口調だ。タラがスニルに電気代を支払ってきてくれるよう頼むが、亭主関白であるスニルは不満を言っている。それを聞いていた車いすの義父が、バツが悪そうにしている。息子のディリップは、パソコンに夢中でタラが話しかけても上の空だ。一通りの家事を慌ただしく済ませるとタラは、小走りで家を出て車で仕事に向かった。
GSLVロケットのプロジェクト・ディレクターのタラは、ロケットの打ち上げ座標を入念にチェックしている。タラがスリハリコタ宇宙センターにデータを送信するよう指示すると、ロケットの打ち上げ準備が始まった。

失敗に終わったロケットの打ち上げ

インド宇宙研究機関(ISRO)のコントロールセンターでは、多くのスタッフや関係者がロケットの打上げの時を待っている。打ち上げ責任者のラケーシュ・ダワンが、気象状況を確認させ、各部署に打ち上げの最終判断を確認する。各部署に、打ち上げの合図をするラケーシュ。しかし、ターボポンプの温度の上昇にスタッフの1人が気付く。温度上昇を指摘されたが、タラは他には問題点はないと判断し、ラケーシュは打ち上げを強行してしまう。カウントダウンが始まり、スタッフたちは一斉に、打ち上げの様子を写すモニターに注目する。ロケット発射場の近くでは、近隣の住民も見学に来ていた。打ち上げは成功したかと思われたが、ロケットは大気圏に突入する前に火災が発生し、制御不能となり墜落してしまう。ミッションの中止を決断し、ラケーシュは、ロケットの自爆指令を出した。ロケットが墜落し、スタッフは唖然とするしかなかった。「失敗を嘆くのは時間の無駄だ」とつぶやくラケーシュ。タラは自分の判断ミスだとラケーシュに謝罪するが、ラケーシュはタラを責めるようなことはしなかった。ラケーシュは記者会見で、記者たちに詰め寄られるが自分の責任だと発言した。世界中のTVニュースや新聞で、ロケット打ち上げの失敗が報道される。ニューデリーのインド宇宙委員会の聴聞会で、ラケーシュは責任を問われ、後任にはNASA から来たデサイが就いた。デサイはNASAで長く勤めて来た経歴を自慢げに語りだした。そんなデサイに、反発するラケーシュは、デサイと険悪な雰囲気になる。ロケットの打ち上げ失敗の責任を取らされ総裁からラケーシュは、実現不可能と言われている火星ミッションに取り組むよう言い渡された。最先端の部署からの移動に悔しそうにするがラケーシュは「私には科学と宇宙しかない」と、火星ミッションに取り組むことを誓った。自分の判断ミスに責任を感じ、落ち込みながら自宅に戻ったタラ。家ではスニルがディリップを問い詰めているところだった。コーランの本を隠し持っていたディリップを頭ごなしに叱るスニルに、ディリップは、生き方は自分で決めると反抗する。ロケットの打ち上げは失敗し、家庭でもいざこざがありタラにとって散々な日となった。

家庭料理から得たタラのひらめき

ラケーシュは、新しく配属された火星ミッションのオフィスの前に立っていた。長く使用されていないオフィスは、薄暗く、埃まみれだった。ラケーシュが、廃れたオフィスを火星にみたてて独り言を言いながら一回りしていると、猫が1匹迷い込んできた。ラケーシュが猫に話しかけていると、タラが姿を現す。ラケーシュが、火星ミッションの責任者になったことが納得できないと、嘆くタラとは反対に、ラケーシュは前向きだ。一方、タラの家では、家政婦がインド式揚げパン・プーリーを作っている。家政婦からガスが切れそうで、火が弱くなっていることを聞かされたタラ。油が高温になっていればプーリーに火が通るから大丈夫だと家政婦に言って、自身も家事の続きを始める。テレビでは、NASAが多額の予算を投じて、ロケットを火星に打ち上げる計画を報道していた。スニルが、ディリップがアッラーを唱えていることでタラを大声で責めているが、タラはTVを凝視しながら、あることをひらめいていた。それは、プーリーの調理方法を参考に火星を目指す方法だった。大慌てでラケーシュのところに駆け付けるタラ。月まで行くのがやっとの性能しかないロケットのPSLVで火星を目指せると言うタラに、あきれ顔のラケーシュ。タラは、プーリーの話をしながら必死に説得をし始めた。ラケーシュとタラは総裁たちを集めるとプーリーを持ち込み、油で揚げ始めた。突然、料理をし始めるラケーシュとタラに総裁たちは驚きを隠せない。タラは火を消してもプーリーが揚がることを証明しながら、2年後にPSLVで火星を目指せると説明する。ロケットの噴射の力を利用して、燃料を節約しながらロケットを飛ばし、地球の重力圏を脱出する方法を力説した。タラの発案は、一旦はバカにされるが、続いてラケーシュも総裁たちを説得する。しかし、ロケットが飛んだとしても、輸送能力が劣るPSLVでは、衛星を搭載することができないことを総裁たちに指摘される。軽量化することを提案するラケーシュだったが、各国がこれまでに衛星の軽量化に取り組んできたが失敗をしていると、却下されてしまう。総裁たちが席を立ち始めると、ラケーシュは総裁たちに、1日15時間働けば、20カ月で目標を達成でき、各国が失敗している中で、インドが一番に火星に到達できる可能性を懸命に訴えた。ラケーシュの熱意に押され、総裁たちはプロジェクトの進行を認めた。7つの部署に400人の職員の配備をして欲しいとタラは総裁に詰め寄る。ラケーシュと同じ用意熱心に詰め寄るタラに計画書を1週間で提出するように指示を出す総裁だが、タラは3日で提出すると強気だ。

集められた素人同然のスタッフたち

新しい火星ミッションに取り組み、タラの帰宅が遅いことに苛立つスニル。帰宅したタラに、仕事を辞めてきたのかと声を荒げた。傲慢な夫に、やりたいことを我慢していては幸せになれないと、タラは言い返す。夫からの理解が得られないまま、タラは火星ミッションに取り組みだす。火星ミッションのチームに配属されてきたのは経験の浅い人材ばかりでタラは激怒する。一方、ラケーシュは、前向きにプロジェクトに取り組み始めた。タラはラケーシュと新しく配属されてくるチームの人員をチェックしている。軽量探査機の設計士のヴァルシャーは、夫と口うるさい義母と同居している。狭い家を広く使うためにベッドやテーブルを収納できるようにしたのはヴァルシャーだ。設計は得意だが義母に、子供ができないことで嫌味を言われている。航法と通信技術者には、クリティカ。夫のリシーは軍人。車の運転の実習で、慌てふためくほど不器用で、今回が初めてのミッションになる。自律システムにはネハ。夫と別居中。ムスリムを信仰しているため、差別を受けている。推進系エンジニアには、エカ。エカは、NASAに転職することを目標にしている。カメラ・ペイロード技術者のパルメールは、結婚をできないことを悩んでいる。町で祭司に火星に気を付けるように言われていた。構造設計士のアナントは、退職をしてアメリカに移住したいと思っている定年間際の男性。素人同然の人員に困り果てている中、火星に精通した人などいないとラケーシュは、明るくタラをなだめた。火星ミッションのオフィスに一番のりしてきた、パルメールはラケーシュとタラに、初日だが、もう辞めたいと辞職を願い出る。婚期が遅れているのは火星のせいだからというのが理由だ。困惑するラケーシュとタラ。そこに、エカがやってくると、エカを一目みたパルメールは、エカに見とれてしまう。次にネハ、ヴァルシャーと次々にオフィスには、新しいチームメイトが集まって来た。いよいよ火星ミッションがスタートした。

再結成された火星ミッションチーム

タラは毎晩、自宅でも遅くまで仕事をしている。ディリップが、タラに声をかけてきてたので、タラはヨーヨーを使いながらディリップにミッションについて説明をした。宗教のことで父親と衝突しているディップに、タラは母として自らの道を歩くよう励ます。一方、チームのミッションは相変わらず難攻していた。タラは厳しい条件の中で、さらに方法を探すようみんなに指示をだしていた。ラケーシュは、無理な条件に音を上げるチームのみんなを励まし続けていた。ある日、火星ミッションのオフィスに総裁がやって来る。総裁は、ロケット開発の予算不足を理由に火星ミッションの計画延期を伝えて来た。解散を余儀なくされたチームは、次々とオフィスを後にする。タラも、家族に退職することを決意したと告げる。スニルは大喜びするが、ディリップは、残念そうだ。スタッフが去った後、どうしても納得のいかないラケーシュは会議に乗り込み、中国が火星ミッションに失敗したことを受けて、インドがアジアで初の火星探査ロケットを発射するべきだと訴える。過去に低い予算で宇宙事業を成功させてきたインドの宇宙科学者たちを例に説得を続けると、総裁は月ミッションを延期し、火星ミッションの継続を決意した。ミッションの再開が決まり、ラケーシュは、去って行ったチーム全員を呼び戻しはじめた。改めて集まったチームの全員はそれぞれの事情を抱えながらも、ミッションに取り組み始めた。そんな中、ヴァルシャーが妊娠したことをタラに相談をする。妊娠を知ったラケーシュは、退職を促すどころか、火星を目指すママだと喜んでくれる。ちょうどミッションの名前を考えており、ママ(MOM)からヒントを得てマーズ・オービター・ミッションと名付けることに決めた。産休を取らず、ミッションに残るなら全力でサポートするとラケーシュは、ヴァルシャーを励ました。ミッション達成まで、残り581日。家庭の事情や体調などで、思うように仕事が進まないことにタラは苛立ちを隠せない。一旦は、仕事を辞めると言っていたタラは、帰宅してすぐにスニルにアニャが帰っていないことを知らされ、家を不在にしていたことを責められる。タラは、アニャがいるディスコにスニルを連れ出し、娘の好きなことや自分の仕事に対して理解を求めるよう訴えた。家族で一緒にお酒を飲み、踊る内に互いを理解しあい帰路につくタラ一家。タラは家族の大切さを再確認し、一致団結しないミッションのチームを集めた。タラは科学者になる夢を叶えた自分たちは幸せだとチーム全員に話すと、科学者としての夢を語り合うことでチームの心をひとつにした。団結した仲間たちを見ながら「第2の誕生日、おめでとう」と、タラは微笑んだ。士気があがったことで、オフィスを一新しようと、チーム全員でオフィスを改築し、さらにチームはひとつになっていった。

アジアで初めてロケットが火星に到達

チームは課題を次々に解決していくが、まだ予算をかなりオーバーしていることを総裁から指摘される。最年長のアナントが、プラスチックが自然にかえらないことに目をつけ、寒さや暑さにも耐えられるうえに、海水は鉄をさび付かせるがプラスチックはサビない素材だと説明する。それを聞いたヴァルシャーはアルミニウムを混ぜて強化できないかと提案をした。過酷な状況に耐えられる軽量素材が開発された。探査機の設計に悩んでいたエカは火星到達に必要な燃料が不足するため、ミッションは不可能だとラケーシュに報告をする。しかし、不可能というならミッションから外れるようラケーシュから叱咤されてしまう。自宅で、頭を抱えて悩んでいたエカだったが、クッションに描かれていた船の帆をみて、探査機の構造のアイデアを思いつく。さらに次に課題となったアンテナについても、チームは、折り紙をヒントに難題をクリアすることに成功した。独特な発想でロケットを完成させたチームは、ミッションの名前を総裁がマンガルヤーンと変え着々と打ち上げに近づいていった。しかし、せっかくの打ち上げ計画も天候の悪化により延期の危機を迎える。お酒を飲んでやけになったラケーシュが地下鉄でケンカを始めたのをきっかけに、憂さ晴らしのようにケンカに加担したチームの仲間たちは、複雑な心境のまま自宅へと戻った。なお回復しない天気に、意気消沈する毎日。打ち上げ目標の最終日が近づき絶望しそうな中、天気が一気に回復し、ミッションが再開される。慌てふためくスタッフは、打ち上げに向け準備を始めた。緊張が走る中、カウントダウンが始まる。ロケットは、予定通り打ち上げられ大気圏に突入した。途中、ロケットが噴射しないトラブルに見舞われるが、30日目に最後の噴射に成功。10か月後の火星到着までの間、問題なく計画は進んでいたが残り数か月となった時、隕石に当たりロケットは音信不通となる。探査機を見失ったことで現場は騒然とするが、以前 パソコンを強制的にシャットダウンすることで回復させた経験から、ロケットとの通信を再起動することで事なきを得る。軌道を外れたと思われたマンガルヤーンだが、2014年9月24日、インドだけでなく世界中が見守る中、予定通り無事に火星に到達することができた。喜びに声をあげるスタッフ。世界中にマンガルヤーンからの火星の映像が届けられた。女性が中心となった、素人同然のチームがなし遂げた偉業に称賛の声が絶え間なく続いた。

『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画』の登場人物・キャラクター

ラケーシュ・ダワン(演:アクシャイ・クマール)

MOM計画の主任で独身。いつもポジティブな考え方で、落ち込むタラをはげます。男女や経歴などで人を差別しない公平な上司。不可能という言葉を嫌い、火星ミッションに人一倍、熱心に取り組んでいる。

タラ・シンデ(演:ヴィディヤー・バーラン)

プロジェクトディレクター。夫と男女の子供、車いすの義父と暮らしている。夫からは仕事を辞めるように言われているが、自分の好きな道をあきらめず、家庭と仕事の両方を大切にしている。

クリティカ・アッガルワール(演:タープーシ・パンヌ)

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