少女終末旅行(Girls' Last Tour)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

「少女終末旅行」とは、WEBマンガサイト『くらげバンチ』で連載された作者「つくみず」による漫画作品。2017年に「WHITE FOX」製作でアニメ化。文明崩壊が起こった終末世界を主人公の「チト」と「ユーリ」は半装軌車「ケッテンクラート」に乗って旅をする。ほのぼのした日常系の作風でありながら、時折垣間見える世界観が切ない。

『少女終末旅行』の概要

「少女終末旅行」とは、「つくみず」による漫画作品。
2014年2月からWEBサイト『くらげバンチ』で連載を開始し、2017年10月には「WHITE FOX」製作でアニメ化。同年12月まで放送された。
アニメのOPは監督の尾崎隆晴が絵コンテ・演出をし、EDはつくみずが単独で手書きアニメーションを作成している。
尾崎監督とつくみずは、対談の中で「背景だけを映しても美しく感じられるよう長回しを用いることと、自然や人工物そして都市全体から出る軋みを音で表現することにこだわった」と話し、背景や世界観をじっくり見せるアニメーションとなっている。

物語は、文明が滅び動植物や殆どの人間が死に絶えた終末世界を、主人公の「チト」「ユーリ」の二人が半装軌車「ケッテンクラート」に乗って旅をするというもの。
二人の行動や会話や背景などから世界観の設定が徐々に明らかになっていく。
気候はいつも寒くて雪が降っている事が多く、建物は朽ち果て、電力が入る施設も少なく、人間や他の生物も居ない。
街は多層構造になっており、二人は廃墟に残っている食料・水・燃料を調達しながら上層部を目指していく。
チトとユーリは嘗て街に住んでいた人々を古代人と呼び、文明が滅びてから大分年数が経っている事が伺える。
上記のような物悲しい世界観でありながら、悲壮な雰囲気は少なく、たまに哲学的な会話を交えながら滅びた世界でチトとユーリはほのぼのと暮らしていく。

『少女終末旅行』のあらすじ・ストーリー

魚発見

主人公「チト」と「ユーリ」は、終末世界をケッテンクラートで旅をしている。
チトは小柄で真面目な性格で本が好きで、ユーリは長身で自由奔放な性格で食べる事が好きという、対照的なキャラクターである。
二人が旅する都市は建物が朽ち果て、戦争で戦った残骸が残り、とても寒い場所である。
二人は元々二人の育ての親であるおじいさんと一緒に暮らしていたが、そこで紛争が起こり、おじいさんは二人はテッケンクラートに乗せ二人を戦地から送り出した。
その後二人は人と出会うことも無く、動植物を見かけることも無く、機能をほぼ停止した都市を移動していた。
都市は多層構造になっており、二人は食料と燃料を調達しながら都市の上層部を目指していた。
テッケンクラートには銃・食料・燃料などを積んでおり、足りなくなると廃墟を漁って調達しながら旅をしている。
廃墟になった町は元々は古代人が築き上げたもので、後の人々がそこに住み着き、そして死に絶え今に至る。

暖かい日の続いたある日、排水管から大量の雪解け水が流れ出す。大昔の都市の排水機能が生きているため、都市の各所から集められた水が一気に放水されているようだ。
空は青く晴れており、洗濯日和。ふたりは雪解け水で飲料水の確保をしつつ、洗濯を始める。真面目に洗濯するチトに対してまったり空を見上げるユーリ。
「空ってなんで青いの?」
ユーリはチトに質問しながらも、何かに気を取られて、水の中へ歩きだす。ユーリが見つけたのは、とっくの昔に絶滅したとされる人間以外の生物「魚」であった。迷いなく、魚を食べようと言うユーリ。焼けば大丈夫かな、とチトもおっかなびっくり魚を食べてみることを決める。
初めて食べた魚の味は、ユーリ曰く「うまい」、チト曰く「へんな味」だった。
魚はどうやら上層から排水に混じって流れて来たらしい。上層に行けば、まだ物資が残っているかもしれない。「上層へ行く」というふたりの旅の方針が、この時、作中で初めて示された。

生存者との遭遇

二人は道中でビルの爆発に巻き込まれ、危うく下敷きになりそうになる。
ビルを爆破したのはカナザワという男性で、カナザワは二人が旅立ってから初めて出会った人間だった。
カナザワは地面の亀裂で道が通れなくなっていたため、ビルを破壊してそれを橋にしようとしていたのである。
カナザワの目的地も上層部で、二人のテッケンクラートに乗せてもらう事になった。
地図の作成を生きがいとしているカナザワは、これまで自分が通り見てきた場所を地図を紙に書き起こしていた。
カナザワの地図は現在チトたちの居る階層のほぼ全域を既に書き起こしており、それを頼りに三人はテッケンクラートの燃料補給をしながら上層部の入り口へと行く。
上層部へ繋がっている塔は外部にエレベーターが付いており、三人はそれに乗り込み上昇する。
しかしエレベーターには壁は無く、非常に不安定なものであった。
チトとユーリはカナザワから現在居る都市にはもう燃料や食料が調達できる場所は残っていないが、もっと上の層へ行けばまだ残っているのではないかと教えてもらう。
その時、エレベーターが突然傾いてしまい、カナザワの鞄が滑り落ち、カナザワは鞄を追って一緒に落ちてしまうが、チトとユーリがカナザワを掴み救った。
なんとかエレベーターを直して三人は上層部へ辿り付くが、カナザワは地図をなくした事で落ち込んでいた。
カナザワにとってこれまで作成してきた地図は、命と同じくらい大事なものであったのである。
ユーリはレーション(軍で配給される野戦食)を一つカナザワに譲り、きっと良い事があると慰めた。
カナザワは食料のお礼にと持っていたカメラを二人にあげ、二人とはここでお別れとなった。

現在チトとユーリがいる都市は電気がまだ生きており、街は街灯がついていた。
そして一つだけやけに光っている建物があり、二人はそこを目指す事にした。
街には白い棒状で先端に顔がついた謎のオブジェが所々に立っていた。
二人が一番光っていた場所にたどり着くと、そこはどうやら寺院であるようであった。
白い謎のオブジェも宗教に関わるものであるようであるが、詳しい事は不明。
二人はカナザワから貰ったカメラを使い、各所で風景の写真や自分達の写真を撮った。

空飛ぶイシイ

二人が旅を続けていると、テッケンクラートが壊れて動かなくなってしまう。
チトが修理しようと試みるが上手く行かず困っていると、空に飛行物体が見えた。
それはラジコンの飛行機で、下にはそれを操る女性「イシイ」が居た。
二人はイシイと接触し、飛行機を製作したのはイシイであることを聞き、テッケンクラートが壊れてしまったことを話す。
イシイはテッケンクラートの修理をしてあげる代わりに、自分の手伝いをして欲しいと二人に申し出た。
イシイは元空軍基地に住み着き、過去の資料から独学で人間が一人乗れるサイズの飛行機を製作している最中であった。
ラジコンは試作機であったのである。
飛行機が完成したらイシイはそれに乗り、隣の都市に向かうつもりなのである。
そしてそのチャンスはまさに今、雪と風のない暖気の時で、今を逃したらもう二度とチャンスは無いとイシイは言う。
良く晴れた日に望遠鏡で外を見ると隣の都市がほんの少し見え、存在は確認できるが、隣の都市がどういう物なのかは不明である。
テッケンクラートは無事直り、イシイの飛行機も完成した。
チトは本当に独学と拾った材料で作った飛行機で飛んで大丈夫なのかとイシイを心配するが、イシイの決意は固かった。
イシイは飛行機で飛び立つが、途中で機体が空中分解してしまう。
しかしイシイはパラシュートで脱出し、これまでの努力からくるプレッシャーから解放されたのか、どこか晴れ晴れした顔で下層へ降りていった。
二人はその様子を見届け、旅を続けるために出発した。

二人はまずイシイから教えてもらった食料のある施設へ行って食料を調達した。
その後、大きな壁に沢山の引き出しがついたロッカーのようになっている墓の前を通り、そこでラジオ機を拝借した。
そして次の上層部へ行くために、上層部へ繋がる塔を登り、次の層へと辿り着いた。
二人は食用魚生産区画を通り、その後まだ動いていた古い電車にテッケンクラートごと乗り込んだ。
するとラジオ機から何か人間の歌声のような悲しい音色がかすかに聞こえた。
しばらく電車で移動したあと、二人は暗い施設の中を彷徨い、ようやく空の見える外に出ることが出来た。
丁度夕暮れ時であり、ラジオからはまた悲しいメロディが聞こえてきた。

人間以外の生命

塔を登って、さらに上の階層の基盤部へやって来たふたりは、食用魚生産施設を管理する自律機械と名乗る、四本足の歩行ロボットに出会う。
他の同型の機械が皆、活動を停止してしまった中で、自律機械は水槽に一匹だけ残った魚の管理を続けていた。自律機械と会話を重ねる内に、自律機械のことを本当に生きているみたいだと感じるようになったチトとユーリ。それは人間とコミュニケーションを取れるよう、「共感」という能力が備わっているからではないかと自律機械は言った。
「…共感って何?」
「あなたたちが喜ぶと私も嬉しいということです」
ユーリの問いに、自律機械は端的に答えた。

自律機械が勧めてくれた温水の通った配管の下で、ふたりは眠りについていた。しかし、その眠りは突如響き始めた工事音に妨げられる。
施設内では自律機械以外にもう一体、巨大な建設機械が稼働していたのだが、その機械が何らかのバグによって暴走を始め、無差別な解体活動を開始してしまったのである。建設機械は自律機械の説得も聞き入れず、施設の破壊を続行する。
このままでは、施設は破壊され、ここに生きている魚も死んでしまう。魚を助けるため、建設機械を止める手伝いを申し出たふたりは、自律機械のアドバイスの元に建設機械を破壊する。施設は大きな被害を受けたものの、ふたりの助力によって魚はどうにか助かった。

謎の生物ヌコ捕獲

二人が周りを探索をしていると、謎の白い生き物が二人の前に現れた。
その生き物を便宜上「ヌコ」と呼ぶ事にした。
ヌコは驚異的な学習能力を持ち、ユーリとチトの会話から言葉を学び、ラジオ機を通して言葉を話した。
最初は置いていこうと思ったが、ヌコが付いてきたため、二人はヌコを連れて行く事にした。
ヌコは銃弾を餌にしていた。
また、ヌコはラジオから流れるメロディを発信する電波の方向が分かるようで、ヌコの言う方へ二人は進んで行った。
移動途中、大きなロボットのような物を二人は発見する。
二人がロボットの中を覗いていると、ヌコが体をコンセントの形に変形させ電源を入れた。
ユーリは運転席に座り、適当に操作するとロボットからミサイルが出て、前方の建物を破壊した。
驚いたチトは止める様に言うがユーリは聞かず、別の操作をしてみると、今度は光線が出て辺り一面を焼け野原にしてしまった。
古代の人間たちはこういったロボットなどの兵器を使って戦争を続け、文明崩壊を招いたのだろうか。

その後二人は風力発電所に辿り着き、ヌコは地上に置いてある潜水艦のような物の中から電波が来ているという。
二人が潜水艦に入り探索すると、高保存されたチョコレートを発見する。
チトがチョコを食べるユーリを写真で撮ろうとすると、画面に接続中という言葉が現れ、ヌコはカメラのデータを施設の中にあった画面に映し出した。
画面にはこれまでチトとユーリが撮った写真とカナザワの撮った写真が現れた。
データにはフォルダが多数存在し、二人はそのデータを全て開けた。

データには何百年またはもっと前の人々の写真や動画の記録が残されていた。
その中にはチトとユーリと同世代の女の子達の撮った映像、小さい子供の成長を写した映像、オーケストラ、葬式、サッカーの試合、アイドルのライブ、そして戦争のニュース映像などがあった。
人々の日常を映した暖かい記録と、戦争の悲惨さと、そして前に二人が乗った戦闘ロボットが街を焼き払う映像が交互に流れる。
チトとユーリは同年代の女の子達の映像に夢中になり、世界にはこんなにも沢山の人間が過去に存在していたのだと知る。
その夜、ユーリはおじいさんの夢を見て涙を流す。
おじいさんとチトとユーリの三人は一緒に住んでいたが、住んでいた場所が戦争になり、おじいさんはチトとユーリを逃がすためにテッケンクラートに乗せ、街から密かに送り出したのである。
ユーリが目覚めるとヌコがおらず、ヌコを探しつつカメラを弄っているとそこに巨大なヌコが現れた。
しかしそれはヌコとは違う個体で、起きて来たチトの目の前でユーリは巨大なヌコに丸呑みにされてしまう。
チトは唖然としその場に膝から崩れたが、武装してユーリを助けに向かった。
小さいヌコの方は事態がわからないようであるが、チトたちに対し敵意は無いようで、チトと一緒にユーリを探しに向かった。
道中、チトはこのままユーリを失ったらどうしようと思い、ユーリとの思い出を反芻しながら泣いてしまう。
チトがようやく追いつくと、ユーリは無事で、どうやら巨大ヌコはユーリの持っていたラジオ機を食べただけのようであった。
巨大ヌコはフォルムチェンジしエリンギのような人型の姿になった。
そして、エリンギは自分達には発声器官が無く電波を言語として理解できることや、人間に敵意は無く食べたりもしない事を話す。
ヌコはエリンギの幼体で、何らかの理由で群れから離れてしまったため自分の事を何も知らないようであった。
エリンギたちの通信シグナルの音が、時折ラジオから流れていた悲しいメロディの正体であったのである。
すると複数のエリンギが表れ、潜水艦に積まれていた核ミサイルを飲み込んだ。
エリンギたちは人間の造った熱的に不安定な物(核ミサイルやバッテリーなどのエネルギー)を食べ、体内で分解して静的に安定させているのだという。
そしてこの処理が全て終わると地球は終わりを向かえ、地球は活動を停止し長い眠りにつき、エリンギたちも眠りにつくというのである。
最上階以外の都市を回っているエリンギたちであるが、生きた人間を確認したのはチトとユーリが初めてだという。
エリンギたちは集団行動するため、ヌコはエリンギたちに引き取られ、チトとユーリははエリンギたちが次の都市へ飛んで行くのを見送った。
地球が終わりを迎えたとしても、自分達二人が一緒にいればどうでもいいと、チトとユーリは微笑みあった。

二人は潜水艦の食堂にあった缶詰を拝借し、都市の最上部を目指して出発した。
チトはユーリに、ヌコが抜けて二人になってしまって寂しいかと聞くと、ユーリは「チーちゃんが寂しいんでしょ?」と答える。
強がって赤くなってしまうチトに、ユーリは「私は寂しくないよ。チーちゃんがいるから」と言う。
チトはユーリに聞こえない小さい声で「私もだ」と答えた。
世界が終わりを迎えると知ってなお、二人の旅は続くのであった。

第6基幹塔の人工知能

エリンギに方向を教わり、ふたりは最上層の手前まで行けるという昇降機がある塔までやって来た。
「第6基幹塔へようこそ!」
何とか塔の入り口を開けることに成功したふたりを、この塔の管理を行っているという人工知能が出迎える。立体映像で少女のような形態を取った人工知能は、ふたりを昇降機まで案内してくれた。
昇降機を動かし、着いた後にはその先の地図も用意してくれるという人工知能は、その代わりにとふたりに一つのお願いをする。人工知能の示した端末を、言われるままに操作するふたり。この操作をするとどうなるのかと尋ねたユーリに、「私が消えます」と人工知能は答えた。
人工知能が数十年かけて書いた自己破壊コードの最後の認証には、人間の手が必要だったらしい。
「私は失敗作の神様でした。さようなら…」
延々と生かされ続ける苦痛を止めてくれたふたりに、お礼と別れの言葉を告げて、人工知能は消失してしまう。

『少女終末旅行』の登場人物・キャラクター

主要人物

チト

CV:水瀬いのり

本作の主人公の一人。ストレートの黒髪を二つに結った、小柄な少女。
冷静沈着で真面目な性格。
手先が器用で、ケッテンクラートの運転をし、時には修理を自分でする事も。
読書好きであるため知識深く、感受性も高い。
基本的にしっかり者だが、慎重さが長じて怖がりでもあり、高いところや危険な通路を通る時にはよく腰が引けている。またカナヅチでもある。
ユーリの事を「ユー」と呼ぶ。
自由奔放なユーリに冷静にツッコミを入れたり、ユーリの理不尽な行動に振り回されがちであるが、ユーリの度が過ぎると殴る。
しかし危機的状況では彼女の大胆さやおおらかさに助けられている。またユーリを失うことを恐れてもおり、ユーリがエリンギに食べられた時はユーリを助けようと必死になった。
ユーリに比べると常識的であるが、知識としてしか知らない事も多い。
日記をつけていて、故郷から持ってきた数冊の本と共に大事にしている。

ユーリ

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